伊藤忠商事やファミリーマート、マツダなど16社は、電気自動車(EV)を中心とした二酸化炭素を排出しない新たな社会システムづくりに乗り出した。
民間が主導し、数億円を投じた全国でも例のない試みだ。17日には茨城県つくば市と共同で、実証実験を始めた。
実験の概要はこうだ。
コンビニエンスストアの駐車場に、カーシェアリング用のEVを置く。ユーザーは、専用クレジットカードで登録して使用する。充電は、店舗上の太陽光発電システムから蓄電池にためた電力を急速充電器に送り、行う。
EVのバッテリー状況は、データ管理される。リチウム電池が劣化し、走行距離が短くなったら、蓄電池として再利用する。100万円以上する電池費用を抑え、EVの普及を促すためだ。
じつは、この試みでひときわ鼻息の荒いのがファミリーマートだ。
国内約7800店舗の8~9割に駐車場が完備されている。全国11ヵ所でカーシェアリングを進め、自治体と災害協定を結ぶなど、地域の拠点として、利用者の囲い込みを図っている。
急速充電器の設置は、危険物のガソリンを扱うわけではないため、防火体制の整備費がいらない。現在約400万円と割高な急速充電器も、経済産業省が「2020年に5000基導入」の目標を掲げるなど、価格低下が見込まれる。
和田昭則・同社取締役常務執行役員は「電気スタンドは取扱商品3000アイテムの中の一つになり、店舗導入が進む。ガソリンスタンドに取って代われる」と言う。コンビニの電気スタンド化で集客効果を上げる狙いがあるのだ。
ガソリンスタンド業界も、電気スタンドなど新たなビジネス展開を模索している。だが、中小零細企業が多く、充電器を導入する余力は乏しい。
約2200のスタンドを展開する伊藤忠エネクスの幹部も、「実験に参加したが、10年間はリターンが見込めない」と言う。EV普及で、ガソリンスタンド業界の先細りは加速する。
(「週刊ダイヤモンド」編集部 小島健志)