
2025年6月23日、ローソンはKDDIの持つデジタル技術を活用した次世代型店舗を東京都港区にオープンした。新店舗には自動調理ロボやアバターによるリモート接客など人手不足の対応策が導入されているほか、27年春以降に競争力の源泉となり得る“秘策”があるようだ。(ダイヤモンド編集部 下本菜実)
王者セブンを追い上げる秘策は
「黒いボックス」の中にある?
KDDIと三菱商事による共同経営体制への移行から1年を目前に、ローソンの“勝算”が示された。6月23日、東京都港区の高輪ゲートウェイシティ内にローソンの次世代型店舗がオープンした。
2024年2月、ローソンと三菱商事、KDDIの3社は資本業務提携契約を締結。三菱商事は17年にローソンを子会社化し、株式の50.1%を保有していた。そこへKDDIが株式公開買い付け(TOB)を行い、24年8月に三菱商事とKDDIがローソン株式の50%ずつを保有する共同経営体制に移行した。
今回、高輪ゲートウェイシティにオープンした新店舗は、ローソンとKDDIで開発を進めてきた“未来のコンビニ”と銘打っており、全国的な導入に向けてさまざまなテクノロジーを装備した実験店舗でもある。
喫緊の課題である人手不足への対応策として、フライド商品の自動調理器や飲料の自動補充ロボ、アバターによる遠隔接客を導入。店舗スタッフの作業内容や動線をテクノロジーで把握し、最適なオペレーションを模索していく計画だ。
消費者に向けては、店舗内の壁や柱を覆う大型サイネージや、商品棚に設けられたサイネージを活用し、新しい買い物体験を提供する。例えば、大型サイネージを通じて、天気や交通情報、フライド商品の揚げたて時間などをお知らせする。
また、商品棚に設けられたサイネージはAIカメラと連動しており、来店客の動きに応じて広告や商品ランキングを表示し、購買を喚起する仕掛けがある。
ところがダイヤモンド編集部の取材によると、今回の次世代型店舗にはテクノロジーの導入・検証だけではない、別の目的があることが分かってきた。公開されたものの中に、ローソンの店舗の今後を大きく変え得る“秘策”があるという。
コンビニの実力を測る数値の一つとして、日販(1店舗当たりの1日の平均売り上げ)が挙げられる。25年2月期決算の日販は、セブン-イレブンが69万2000円、ローソンが57万4000円、ファミリーマートが57万3000円となった。王者セブンとローソンの間には、まだ10万円以上の差があるが、KDDIとの提携でどこまで日販の差を縮められるのか。
その秘策は「黒いボックス」の中にあり、将来的には形を変えて全国の店舗に出現する構想があるという。次ページでは、競合他社を大きく引き離す可能性がある一連の戦略をキーマンが明かす。