最近、対人関係の問題などで心を病む人が増えています。会社は多くの人が集まる場所。そこには、上司や先輩、同僚、部下や取引先など、多くの人間関係が生じます。それらの関係は、いずれもストレス要因になり得ます。職場のストレスをなくし、働きやすい環境をつくるのは、現場を預かるリーダーの仕事のうち。本連載では、『部下をもつ人の職場の人間関係』を上梓した対人関係療法の第一人者で精神科医の水島広子氏が、職場のストレスをなくし、円滑な人間関係をつくるコミュニケーションのコツをアドバイス。第7回はリーダーに求められる「聴く力」のポイントを解説します。

リーダーに求められる
「聴く力」2つのコツ

 人の話を聴くことの重要性については、最近、大きく認識が変わってきたと思います。

 ビジネスリーダーにとっても、それがいかに重要であるかについては、多くの本でも述べられています。

 しかし、案外うまくいかない人も多いのではないでしょうか?

 すぐにイライラして自分の考えを述べてしまったり、「でも」「だって」と途中で遮って自分が話し始めたり、質問したりしてしまう人。

 話を聴くことに疲れて「いったいどこまで聴けばよいのかわからない……」という人など、「聴く」ことに関して苦労している人は、少なくないはずです。

 いわゆる「毅然としたリーダー」像は、自分の主張をきっぱりと伝える、というように、「話す」こと、「伝える」ことに重きが置かれているように思えます。

 しかし、「インタビュー」の重要性からもわかるように、「何を伝えるか」は「何を伝える必要があるか」を知るところからしか始まりません。

 ですから、機能するリーダーとなるためには、まずは「聴き方」が上手になる必要があります。

 上手な聴き手になるためには、大きく以下の2つのポイントがあります。

1.自分の思考を脇に置いて聴く
 2.解決しようと思わないで話を聴く

 以下では、これらの点について、それぞれお話しましょう。