今クールの最注目ドラマ『下町ロケット』。12月20日に最終回を迎えるが、大企業と中小ものづくり企業の軋轢や、それを乗り越えていくストーリーが多くの視聴者の心を掴み、番組の視聴率はついに20%を超えた。
まさに「ものづくり立国ニッポン」の現場を描くことで視聴者に元気を与えている同ドラマだが、その注目の陰で、数年前から注目されてきたある町工場主体のプロジェクトが、1つの試練を迎えていた。
2015年11月17日、日本ボブスレー・リュージュ・スケルトン連盟は、2018年に控える「平昌冬季五輪」において、東京都大田区の中小企業による「下町ボブスレー」プロジェクトが開発したマシンを採用せず、ドイツ製のマシンで戦うことを決定、同18日に発表した。この瞬間、「下町ボブスレー」は3度目の大きな挫折を経験することになった。
この「下町ボブスレー」がたどってきた苦難のストーリーと、現在見据えるこれからの挑戦について、発起人である細貝淳一氏(株式会社マテリアル代表取締役)に話を伺った。
大田区ものづくり企業が結集した
「下町ボブスレー」プロジェクト
大田区の製造業社有志により結成された「下町ボブスレー」プロジェクトは、リーマンショック後に生まれた、「製造業の技術を1つの想いで束ねて世の中に届けていく」取り組みだ。当時大田区では、元々操業していた9000社あまりの製造業企業が、約3000社へと激減していた。ものづくりの業界において、隣の会社が潰れることには想像以上のデメリットがあると、「下町ボブスレー」の発起人である株式会社マテリアルの細貝淳一氏は語る。
「大田区は試作業界でやってきた。スピード重視、そして横の連携で依頼されたものを形にするということが強みの1つ。ものづくりの世界は、地域の先輩が図面や工具を貸してくれたり、支えあって成長してきた。だが会社が潰れてしまうと、地域が持っていた横の連携が成り立たなくなり競争力が失われてしまう。1年目の企業は銀行からの信用も低く、新規で立ち上げていくことが難しいため、その穴を補完していくこともできなくなってしまう。そんな危機感から、もう一度隣とのつながりを強化していく集まりをつくりたいと考えたのが『下町ボブスレー』のきっかけでした」(細貝氏)