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「第三の開国」でもやらない限り、
一億総活躍社会は夢のまた夢

ジャーナリスト・嶋矢志郎

嶋矢志郎 [ジャーナリスト]
2015年12月24日
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政府が掲げる「一億総活躍社会」の理想の姿は、現実離れしている。現状認識はどうなっているのか

 政府は、安倍首相が掲げる新しい政策ビジョン「一億総活躍社会」の実現へ向け、当面の緊急対策をまとめた。最大の目玉は、子育てや介護の支援強化策である。働く人が子育てや介護のために仕事を辞めなくても済むような福祉社会の実現を目指して、計100万人分の保育や介護の施設整備を打ち出すなど、大胆な絵図を描いている。しかし、その姿は現実離れした理想郷のように思え、実現への道筋は不透明である。

 最大の難題は今後、中長期にわたり恒常的に必要となる保育や介護に従事する膨大な就業者と恒久財源の安定確保を、どのように担保していくかである。安倍政権はこの難題解決へ向けて、考え得る施策を総動員してでも、この理想郷の実現に政治生命を賭けてほしいが、日本経済の実態に鑑みると実現への道程は厳しく、目標を達成するのは容易ではない。

 安倍首相は「一億総活躍社会とは、成長と分配の好循環を生み出していく新たな経済社会システムの提案(構築:筆者注)である」と強調している。これが建前ではなく、本気の提案であるならば、これを機に、日本もターゲットを絞った、より効率的な税と社会保障の構造的な一体改革に踏み切り、貧富や世代間の格差拡大に歯止めをかけ、拡大の一途を辿る格差構造を根本的に是正しながら、保育と介護に必要な膨大な就業者と恒久財源の長期安定確保に布石を打っていくべきである。

選挙目当ての大風呂敷?
現実離れした3つの目標

 安倍政権によると、一億総活躍社会の実現は、アベノミクスの第2ステージの中心施策と位置づけられている。一億総活躍社会とは、50年後も日本の総人口1億人を維持するため、若者から女性、高齢者、身体の不自由な人といった区別なく、国民1人ひとりが生きがいを持って活躍できる全員参加型の経済社会であり、2020年頃までに道筋をつけたいとしている。

 具体的には、第2ステージの新・3本の矢である「希望を生み出す強い経済」「夢を紡ぐ子育て支援」「安心につながる社会保障」と連動して、それぞれの具体的な目標に「GDP(国内総生産)600兆円」「希望出生率1.8」「介護離職率ゼロ」を掲げている。

 安倍政権は「(第1の矢で)経済成長を実現し、その果実を子育て支援や社会保障の基盤強化に投じる。(第2、第3の矢で)社会基盤が強化されることで労働参加率が高まり、さらなる成長につなげる。このような持続的な成長と分配の好循環を生む」ことに期待して、来年春には「ニッポン一億総活躍プラン」を策定する方針であるが、いずれの目標も実態からほど遠く、現実感に乏しい。専門家の間では「選挙目当ての大風呂敷にしても、軽すぎる」などと、評判がよくない。

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嶋矢志郎 [ジャーナリスト]

ジャーナリスト/学者/著述業。東京都出身。早稲田大学政経学部卒業。日本経済新聞社(記者職)入社。論説委員兼論説副主幹を最後に、1994(平成6)年から大学教授に転じ、芝浦工業大学大学院工学マネジメント研究科教授などを歴任。この間に、学校法人桐朋学園理事兼評議員をはじめ、テレビのニュースキャスターやラジオのパーソナリティなどでも活躍。専門は、地球社会論、現代文明論、環境共生論、経営戦略論など。著書・論文多数。


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