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ニューロビジネス思考で炙り出せ!勝てない組織に根付く「黒い心理学」 渡部幹

善良な人も極悪人に仕立て上げられる!
人間心理のトリック

渡部 幹 [モナッシュ大学マレーシア校 スクールオブビジネス ニューロビジネス分野 准教授]
【第42回】 2016年1月20日
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ネットの住民が大好きな
「決めつけ」に潜む罠

 本連載「黒い心理学」では、ビジネスパーソンを蝕む「心のダークサイド」がいかにブラックな職場をつくり上げていくか、心理学の研究をベースに解説している。

 ここのところ、さまざまなニュースが話題になっている。インドネシアでのテロ事件、安倍政権の政策やヘイトスピーチをめぐる左翼と右翼の衝突、SMAPの解散騒動など、目玉ニュースの移り変わりが激しい。そういったニュースが出るたびに、ネットで多くの意見やつぶやきが投稿される。その影響力は昨今では無視できず、マスメディアや政治家も影響を受ける。

他人の行動を分析する際、「本人が望んだに違いない」と早合点しがち。それは、心理学的にも立証されている人間心理の傾向である

 筆者はそういうネット上での書き込みを見るとき、心理学者として、ある部分に違和感を覚えることがある。この違和感は、ビジネス場面でのインタビューをしているときにも感じることがある。

 筆者が違和感を抱くのは、ある行動をとった人物を分析する際、その人物が「望んで」そういう行動をとっている、と決めてかかる意見がかなり多いことだ。もちろん、そういう場合もあるだろうが、もう少し慎重に物事を見るべきと考えている。

 ビジネスシーンではないが、1つの例を述べたい。

 いまから数年前、インドのムンバイで列車爆破テロ事件があった。ムンバイはインドの金融センターというべき場所で、外国人も多い国際都市である。そこの主要駅を含む7ヵ所で11分の間に連続して爆破が起こった。複数の実行班が列車や駅に時限爆弾入りのかばんを置いたのだ。死者200人を超える大惨事となり、当時はその影響で東京株式市場も大幅に値を下げたほどだ。パキスタンに本拠を置くイスラム過激派が犯行声明を出し、インドとパキスタンの関係がさらに悪化するきっかけにもなった。

 最近ではイスラム国(IS)による大規模テロが欧州で起こり、筆者の住むマレーシアでもつい先日、自爆テロ犯が未遂のまま拘束された。こういったテロへの不安が増大する一方、私たちはテロリストの実際についてはあまり知らない。正確には、「知ったつもりになっている」のだ。

 多くの人は彼らについて、「狂信的なイスラム原理主義者で、自分たちの信ずるイスラム世界をつくるためには、他教徒を殺しても構わないと思っている人々」といったイメージを抱いているだろう。だが、少なくとも自爆テロ実行犯については、そのイメージは外れていることが多いのだ。

 筆者の友人であるインド系マレーシア人から、先日初めて聞いたのだが、その犯人のひとり、Aは、当時マレーシアに住んでいた。そして筆者の友人は、そのAの友人だったそうだ。

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渡部 幹(わたべ・もとき)
[モナッシュ大学マレーシア校 スクールオブビジネス ニューロビジネス分野 准教授]

UCLA社会学研究科Ph.Dコース修了。北海道大学助手、京都大学助教、早稲田大学准教授を経て、現職。実験ゲームや進化シミュレーションを用いて制度・文化の生成と変容を社会心理学・大脳生理学分野の視点から研究しており、それらの研究を活かして企業組織にも様々な問題提起を行なう。現在はニューロビジネスという大脳生理学と経営学の融合プロジェクトのディレクターを務めている。代表的な著書に『不機嫌な職場 なぜ社員同士で協力できないのか』(共著、講談社刊)。その他『ソフトローの基礎理論』(有斐閣刊)、『入門・政経経済学方法論』、『フリーライダー あなたの隣のただのり社員』 (共著、講談社)など多数。


ニューロビジネス思考で炙り出せ!勝てない組織に根付く「黒い心理学」 渡部幹

この連載の趣旨は、ビジネスマンのあなたが陥っている「ブラック」な状況から抜け出すための「心」を獲得するために、必要な知識と考え方を紹介することにある。社員を疲弊させる企業が台頭する日本社会では、「勝てない組織」が増えていく。実はその背景には、マクロ面から見た場合の制度的な理由がある一方、日本人の持つ国民性や心理もまた、重要な要因として存在する。そうした深いリサーチが、これまで企業社会の中でなされてきただろうか。本連載では、毎回世間で流行っているモノ、コト、現象、ニュースなどを題材として取り上げ、筆者が研究する「ニューロビジネス」的な思考をベースに、主に心理学や脳科学の視点から、その課題を論じていく。あなたは組織の「黒い心理学」を、解き明かすことができるか。

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