元銀行マンの准教授が語る 「腹に落ちる」環境学
【第19回】 2010年6月22日
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見山謙一郎 [立教大学AIIC特任准教授/フィールド・デザイン・ネットワークス代表]

日本の水道をアジアに輸出せよ!
国家の重点施策に掲げられた「水ビジネス」の盲点

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 政府は6月18日、新成長戦略を閣議決定し、7つの戦略分野と、21の国家プロジェクトを示しました。戦略分野については、「○○大国」などの誇張を除き、シンプルに整理すると以下のようになります。

1)イノベーションによる環境・エネルギー戦略
2)イノベーションによる、健康戦略
3)アジア経済戦略
4)観光・地域活性化戦略
5)科学・技術・情報通信戦略
6)雇用・人材戦略
7)金融戦略

 1)の環境・エネルギー分野については、2)の健康と同様で、生活習慣などを変えつつも、やはり最後は「イノベーション頼み」といったところかもしれません。

 3)のアジア経済戦略においては、戦略のひとつに「パッケージ型インフラ海外展開」というものがあります。その中で、最近特に注目されているのが、「水ビジネス」です。

拡大する市場。
水ビジネスで海外を目指す日本

 水処理に対するニーズは今後ますます高まるものと予想されており、経済産業省の試算によると、2007年現在の水ビジネスの市場規模は約36兆円。それが、2025年には約87兆円に増加。約2.4倍に拡大することが見込まれています。

 これまでも、淡水化など日本企業が有する水処理技術は、世界のトップクラスと言われていました。しかし海外展開では、ヴェオリアやスエズというフランスの民間企業(水メジャー)に遅れを取っていました。

 その原因は、日本の企業は技術的には優れているものの、水道事業の運営ノウハウを持ち合わせていないことにありました。皆さんもご存知のとおり、日本で水道事業を運営しているのは地方公共団体です。

 そこで今回のアジア経済戦略の中にあげられた「水ビジネス」では、企業と地方公共団体との連携により、「技術×運営ノウハウ」をパッケージ化し、そのインフラで海外展開を目指そうというものです。

 確かに、水ビジネスに限らず、環境ビジネスにおいては、日本の優れた技術、ノウハウを海外に展開していく方向性が王道だと思います。事実、閣議決定された成長戦略でも、「国内から海外へと」という戦略が目につきました。

 しかし日本人の多くは、環境問題に関して頭では理解しているものの、何かモヤモヤする、つまり「腹に落ちない」状況に陥っています。そんな中で、環境を国家戦略の重点施策に掲げ、「環境分野で海外に進出」といわれても、多くの人はピンと来ないかもしれません。

 これまで、環境政策の多くは国内完結型のものでした。そこからいきなり海外展開を目指すと言っても、そのまま順調に進むとは思えません。国内展開という「内向き志向(内から内)」から、海外展開という「外向き志向(内から外)」に、単に切り替えるだけではダメなのです。

 海外に出て行くのであればなおさら、日本の現状を改めて知る必要があります。海外に出てこそ、日本を再認識するという「価値観の相対化(外から内)」という視点を持つことが重要なのです。

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見山謙一郎 [立教大学AIIC特任准教授/フィールド・デザイン・ネットワークス代表]

1967年生まれ、埼玉県出身。90年立教大学法学部を卒業後、住友銀行(現三井住友銀行)に入行。本店営業第一部上席部長代理などを歴任。05年立教大学大学院修了(MBA)。同年10月に三井住友銀行を退職し、アーティストが設立したNPOバンク(ap bank)に理事として参画。環境に関するさまざまなプロジェクトへの融資・支援活動に携わるかたわら、環境省の行政委員などを複数務める。09年1月に独立。同年2月に株式会社フィールド・デザイン・ネットワークスを設立し、代表取締役に就任。金融機関やベンチャー企業、教育・行政機関等の企画立案業務に携わるかたわら、各種講演活動も行っている。立教大学AIIC「立教グラミン・クリエイティブラボ」副所長。多摩大学経営情報学部非常勤講師。
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元銀行マンの准教授が語る 「腹に落ちる」環境学

ちまたにあふれる環境ニュースやキーワードの数々。近年のエコブームで「地球にやさしい」というところで思考停止してしまい、その本質を理解できていない人は意外と多い。当連載では、国やメディアに先導されたままの環境キーワードを取り上げ、「論理」と「感性」の両方を満たす、真の環境リテラシーについて考える。

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