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元銀行マンの准教授が語る 「腹に落ちる」環境学

CO2はもはや「環境問題のモノサシ」にはなり得ない!
「京都議定書」延長をめぐる駆け引きで、日本が負った新たな責任

見山謙一郎 [立教大学AIIC特任准教授/フィールド・デザイン・ネットワークス代表]
【第31回】 2010年12月14日
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 一年の世相を漢字一字で表す「今年の漢字」に「暑」が選ばれました。夏の記録的な猛暑や、チリ鉱山の落盤事故での暑い地下からの奇跡の生還、さらには、はやぶさが大気圏突入時の暑さに耐えて地球に無事帰還したことなどが、選ばれた理由のようです。

 いまとなっては、「暑」という漢字を見て、「そう言えば、今年は猛暑だったなぁ」と、あらためて思い出した人も多いのではないでしょうか。私も、今年8月の第22回記事で「今年の猛暑で感じる、日本人の“エコ疲れ”」について書きました。

 これをあらためて振り返ると、

■猛暑だと、快適性の追求や熱中症予防のため、エアコンが手放せなくなる。
■人々はエアコンの恩恵を感じる一方、省エネ(CO2削減)に反する行動に罪悪感を覚える。
■その結果として、日本人はこの時期、むしろCO2削減を目的化した環境の話題を避けて通る傾向にある

 という、まさに「エコ疲れ」を体現する話でした。

冬に温暖化を語る違和感

 では、冬になれば、CO2削減を目的化した環境問題を皆が話題にするようになるのでしょうか。現実を見ると、答えはそうではなさそうです。特に今年のような暖冬ですと、例年よりも暖房を使う機会も少なくなり、家計的にも助かっています。暖房を使う機会が減ればエネルギー消費量は減りますから、結果的にCO2削減という点でもプラスに働きます。

 このように目先の実感に限って言えば、地球温暖化は普段の生活において、いつも「悪者」ではなさそうです。従って、いまのような環境問題=地球温暖化(気候変動)と捉え、CO2だけに責任を押しつける議論は、「夏は猛暑でエアコンに頼るためがゆえに語れず」、「冬は暖冬でヒーターが不要となり、語る必要もなくなる」ということになり、国内においては一年を通して議論が盛り上がらないまま終わることになりそうです。この点からも、環境問題を地球温暖化、CO2で語ろうとする、いまの一元論的な環境問題の捉え方には、違和感を覚えるのです。

 一昔前であれば、「情報の非対称」というものが世の中に存在し、一元論的な問題の捉え方による論点の集約化は、容易かつ有効であったと思います。しかし、いまやインターネットに代表される高度情報技術が発展し、世界の情報をリアルタイムで見ることができるようになりました。

 さらには、いま話題のウィキリークスなどの出現により、情報の非対称はなくなり、むしろ様々な情報が錯綜するカオスな状態となります。ソーシャルメディアでは地球温暖化の議論も、クライメイトゲート事件や、実はCO2が温暖化の原因ではないといった情報が氾濫し、まさにカオスな状態です。いまや、CO2に責任を押しつける一元論的な環境問題の捉え方は、限界にきているのです。

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見山謙一郎 [立教大学AIIC特任准教授/フィールド・デザイン・ネットワークス代表]

1967年生まれ、埼玉県出身。90年立教大学法学部を卒業後、住友銀行(現三井住友銀行)に入行。05年立教大学大学院ビジネスデザイン研究科修了(MBA)。同年10月に三井住友銀行を退職し、Mr.Childrenの桜井和寿等が設立したNPOバンク(ap bank)に理事として参画。09年2月に株式会社フィールド・デザイン・ネットワークスを設立し、代表取締役に就任。企業や金融機関に対する戦略・企画コンサルティングを行う。専門は、循環型(環境)ビジネス、ソーシャルビジネス、BOPビジネス及びファイナンス。立教大学AIIC「立教グラミン・クリエイティブラボ」副所長。多摩大学経営情報学部非常勤講師。
☆ご意見・お問合わせはこちら  ☆Twitterアカウント:ken_miyama


元銀行マンの准教授が語る 「腹に落ちる」環境学

ちまたにあふれる環境ニュースやキーワードの数々。近年のエコブームで「地球にやさしい」というところで思考停止してしまい、その本質を理解できていない人は意外と多い。当連載では、国やメディアに先導されたままの環境キーワードを取り上げ、「論理」と「感性」の両方を満たす、真の環境リテラシーについて考える。

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