苦節6年強──。店内調理の実現というローソンの長年の夢が、ついにかたちとなった。開発にはこれまで、じつに70億円ほど投資してきたが、「それでもなかなかできなかった」。6月16日、新浪剛史・ローソン社長は会見の場で、今までの苦労を感慨深げに語った。
そもそも、ローソンが店内調理にこだわったのは、既存の弁当だけでは、弁当の長期低迷の解消が難しかったからだという。そこで注目したのが、利用率の少ない主婦層や高齢者層などだ。店内調理の「ライブ感とわくわく感の提供」で、客層の拡大を目論んだ。
店内調理の展開には、「ローソン神戸ほっとデリ」を導入する。神戸物産と合弁会社を設立して実験してきたシステムだ。
神戸物産は店内調理惣菜と物販の融合店「Green’s K(グリーンズK)」などを展開しており、メニューの開発や製造、店内調理に明るい。なかでも、今回の取り組みには同社が独自に打ち出す“パーツアッセンブル(パーツの組み立て)方式”が役立っている。
パーツアッセンブル方式では、国内外にある神戸物産の自社工場などで各パーツを大量生産。店舗ではそれら中間加工されたパーツを組み合わせるだけでよく、アルバイトでも手早く簡単に調理ができる。いかにパーツを効率的に組み合わせてメニューを開発するかが最大のノウハウで、それが“お値打ち価格”での販売の肝となる。
目標は今年度中に200店、2015年度までに1000店での展開だ。ほっとデリは4坪あればできるので、小型店でも対応可能。ただし導入店は基本的に既存店だ。まずは、「日販が30万~40万円くらいの店を復活させる」(新浪社長)。粗利益率は既存の弁当より20~30%増やしたい考え。実験店では全体の売り上げが20~25%拡大しており、期待は大きい。
加えて、実験店では廃棄ロスが5%強から1%未満に縮小した。店内調理は24時間体制でないうえ、「売れ行きに応じて量を調節でき、少し残った場合はパック詰めにして売り切る」(実験店、ローソン大井店の高橋勝司店長)からだ。
ほっとデリは、「まさに私たちが課題としてきたことをすべて解決してくれる」(新浪社長)仕組みだ。
しかし、本当の戦いはこれからだ。
確かに店内調理は需要の変化に対応しやすい。しかし、セルフ式の詰め放題など、作り置きするメニューもあるので、需要予測がいらないわけではない。廃棄を減らそうと思えば、結局は加盟店のきめ細かい対応が必要となる。
また、店内調理には2~3人の専任が必要。メニューの開発力と、顧客のニーズに対応できる店のメニュー選定力がなければ、人件費増を賄えるだけの売り上げ増は継続できない。加盟店のオペレーションをいかに徹底できるかが課題となる。
(「週刊ダイヤモンド」編集部 新井美江子)