何度もビジョンを
「振り返る習慣」をつくる

もう1つ、ビジョンを現場に浸透させるための方法として、さまざまな書籍などでも触れられているのが「クレド」です。

クレドとは、ビジョンや行動指針が書かれたカードなどを指します。

クレド経営はかなり一般化しており、社員手帳や社員証の裏に記載されていたり、名刺フォルダーにカードを入れることになっていたりと、かなり多くの企業が取り入れています。クレドに自分の目標を書いて1年後に達成度を確認するとか、朝礼で声に出して読み上げるという会社も少なくありません。

有名なところでは、ザ・リッツ・カールトン・ホテルカンパニーのクレドカードがあります。リッツ・カールトンの従業員たちは、行動指針となる「ゴールド・スタンダード」が記載されたクレドカードをつねに携帯しており、その理念を心に刻んでいます。

ただし、クレドをつくったり配ったりするだけでは、ビジョンが浸透することはまずありません。クレドはビジョンを思い出すための補助ツールでしかなく、これを配りさえすればビジョンが共有されるというほど簡単なものではないのです。

かつて「社長トーク」でお話を伺ったある企業でも、「企業行動憲章」が記載されたクレドカードを従業員に配布していました。

ユニークだったのはその運用の仕方です。さまざまな地域のお客様に個別対応できるようにと、「現場レベルで何らかの決断を下すときには、必ずクレドカードを見る」というルールが設けられていました。

「ビジョンに照らして正しければ、個別の判断は現場でやっていい」という体制は、まさにビジョン型リーダーシップを実現している例だと言えるでしょう。