新商品が減ることで、良くも悪くも消費者の「悩む機会」は減りそうだ Photo:Bloomberg/gettyimages

 食品メーカーにとって、春と秋は勝負の時である。食品各社が新商品を大量に投入し、小売店の陳列スペースを奪い合う。棚に並ぶ“参戦権”がなければ商品は売れない。そのため、小売店に新商品がどの程度採用されるかが、食品メーカーの業績を左右するともいわれてきた。

 ところが、である。今年の春商戦では異変が起きている。大手食品メーカーが、こぞって新商品数を大幅にカットしているのだ。

 キユーピーは新商品数を2015年度の45品から17品に削減。森永乳業も15年度の166品から117品に絞るほか、明治ホールディングスや敷島製パンも同様に新商品数を削減する。

 なぜ、大手食品メーカーによる一斉カットが始まったのか。

 一つ目の理由は、非効率な投資サイクルにメスを入れるためである。これまで食品各社は、消費者の多様なニーズに応えようと多くの商品を開発してきた。ところが、販売促進費や広告宣伝費といった巨額のマーケティングコストを投じても、大半は半年以内に陳列棚から姿を消してしまう。

 商品サイクルの短さは、生産の非効率にも直結する。多品目小ロットの生産体制は稼働率の低下を招き、「稼働時間よりも次の商品を作るためのライン洗浄の時間の方が長い設備もあったほど」と、櫻木康博・キユーピー家庭用本部長執行役員は自嘲気味に言う。

 原材料コストの上昇が避けられない中、食品メーカーは、“費用対効果”が得られない投資の継続を看過できなくなっているのだ。