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2016年3月9日
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上原 修 [日本サプライマネジメント協会代表理事]

大震災後、日本企業のサプライチェーンは強靭化したか(上)

東日本大震災では、サプライチェーンが寸断され、日本経済と国民生活、さらには世界経済にも大きな影響を及ぼした。企業にとっても「サプライチェーン防衛」は火急の課題となった。大震災を受けて変化はあったのか。現在の課題は何か。この問題の第一人者である上原修・日本サプライマネジメント協会代表理事の解説・提言を2回連続でお送りする。

東日本大震災で思い知らされた
「サプライチェーン防衛」の重要性

東日本大震災では、サプライチェーン(供給網)の寸断が大きな問題となった
Photo:NEXCO/AFLO

 東日本大震災は、日本のみならず世界中に甚大な被害をもたらした。極めて多くの製造業、部品メーカーが被災したため、当然入ってくるべき原材料や部材が急停止し、国内はもちろん、海外の企業の事業にまで影響が及んだのである。

 日本の持つモノづくりパワーが世界に証明された一方で、日本の産業なしでは世界の産業が立ち行かなくなる現実を露呈したのも事実である。同時に日本に依存していては世界が危ないことに気づき、日本離れも加速した。

 逆に言うと、この震災で日本の経営者は、サプライチェーン、つまり供給網の寸断がいかに企業経営に痛手となるかを思い知ったとされる。サプライチェーンの上流を守り、円滑な部材の調達、原材料の仕入れを安定化させるのは、本来、購買調達部門の仕事であるが、大きくマインドセット(思考様式)を変え、全社を挙げて支援しなければならないという、事の重要性、重大性が社内で共有されたと考えられる。

 戦後、経済成長を確実に進めてきた日本経済は、原材料や資材・機材などは、お金さえ払えば当たり前のように入ってくるという長い経験から、その逆(入ってこないこと)は、許される状況ではなかった。一方で、自然災害は不可抗力という言葉を使えば何となく許される環境にもあった。

 しかし、企業を取り巻く経営環境が激変し、経営者がリスクを取る姿勢に変わってきた頃から、危機管理はリスクマネジメント(RM)という表現に変わり、昭和40年代後半から日本でもリスクマネジメントの専門書が企業経営という視点から相次いで出版されてきた経緯がある。不可抗力であっても予期し被害を最小限に食い止め、最短の時間で復旧する経営姿勢に変わってきたのである。

 それは現在にも通じるが、実は、このリスク管理の概念は、顧客志向の多様化・複雑化とグローバル化、製品ライフサイクルの短縮化、地球環境保護、さらには企業の社会的責任といった現代の経営課題とも大いに関連するのである。つまり、経営環境の急激な変化が様々なリスクを伴って企業に襲いかかってくるというわけだ。

 自然災害を単なる不可抗力として逃げるのではなく、自らサプライチェーンを防御・防衛し、自社の顧客に迷惑をかけず、持続的に満足してもらうという姿勢が、リスクをも包含した、企業体の本来の社会的責任でもある。

 日系企業にとって、サプライチェーン寸断にどう対処するかは、喫緊の課題なのだ。

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上原 修 [日本サプライマネジメント協会代表理事]

うえはら・おさむ/特定非営利活動法人日本サプライマネジメント協会TM 代表理事、米アリゾナ州立大学大学院CAPS Research日本筆頭研究員、仏パリ商科大学院ESSEC・国際購買学部MBA特任教授、法政大学経営大学院イノベーションマネジメント研究科兼任講師、スイス・ジュネーブSCM経営学院 ByAction Learning 教授。1950年生まれ。仏ポアチエ大学政府留学・ブザンソン大学社費留学 学位取得。MBA(経営情報学修士)。日本鉱業株式会社(現:JXホールディングス株式会社)にて長く国際購買調達物流等を担当。同社コンゴ鉱山資材マネジャー、日鉱ニューヨーク事務所長、国際購買担当部長、米国e-commerce会社常務執行役員・購買本部長を経て現職。文部科学省独立行政法人コスト検討委員、内閣府行政刷新会議公共調達改革にてアドバイザーを務める。『グローバル戦略調達経営』(日本規格協会)、『購買・調達の実際』(日経文庫)、『枯渇性資源の安定調達戦略』(日刊工業新聞社)、『戦略的SCM―新しい日本型グローバルサプライチェーンマネジメントに向けて』(日科技連出版社・共著)、『人にやさしい会社 安全・安心、絆の経営』(白桃書房・共著)、『フランス人の流儀―日本人ビジネスパーソンが見てきた人と文化』(大修館書店・共著)、『ISO-26000実践ガイド』(中央経済社・共著)など著書多数。

 


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