払拭できない前回増税の影響
来年4月の消費再増税は難しい
安倍首相は、今でも来年4月の消費税率の再引き上げを行う姿勢を示している。しかし、経済専門家や政府関係者の一部では、「来年の再引き上げは凍結すべき」との声が高まっている。
足元のわが国の実体経済を見ると、何とか横ばいの推移は続けているものの、2014年4月の消費税率引き上げのマイナス分を払拭できていない。
家計部門の実質ベースの所得が伸び悩んでいることもあり、個人消費の水準はなかなか前回の消費税率引き上げ前まで戻らない。GDPの約6割を占める個人消費が盛り上がらないと、どうしても経済全体の活力が高まらない。
また海外に目を転じると、中国経済の減速の鮮明化もあって、新興国経済の低迷が続いている。牽引役の米国経済は、今のところ底堅い展開が続いているものの、わが国の輸出が大きく伸びることは期待し難い状況だ。
こうした経済状況が続くと、来年4月の消費税率の再引き上げは事実上難しい。経済状況を無視して政府が引き上げを実施すると、景気の腰を折ってしまうことになるだろう。
財政再建を優先して消費税率を引き上げて、経済を本格的に下落させてしまっては、それこそ“元も子もなくなる”。安部政権も十分にそうした状況は理解しているはずだ。