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「引きこもり」するオトナたち

女性弁護士ワーキングプアが廃業へ追い込まれた事情

池上正樹 [ジャーナリスト]
【第257回】 2016年3月24日
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いったいなぜ、女性はせっかくの資格を返上しなければならなかったのか ※写真はイメージです

 せっかく資格を取っても、仕事がないために自立できない人たちの話をよく聞く。

 昨年5月、当連載で紹介したワーキングプア女性弁護士も、その1人。記事を掲載後、問い合わせが相次ぐなどの大きな反響が寄せられた。

 しかし、結局、女性は資格の登録を抹消し、弁護士を廃業した。

 いったいなぜ、せっかく持った資格を返上しなければならなかったのか。そこには、維持するための会費などの問題があった。

月額5万円弱、滞納は約1年に
重くのしかかった弁護士会の会費

 弁護士資格がありながら、会費の問題などから廃業に追い込まれたのは、50代前半のA子さん。昨春、インタビューさせていただいたときも、5年ほど弁護士としての仕事がまともにないために、資格を隠して、細々と週に1回、本業と関係のないアルバイトをしているようなワーキングプアの状態だった。

 アルバイト以外の収入がなく、社会保険料も弁護士としての年会費も支払えずにいる。そんな仕事のない状況が何年も続いてきたが、会費の滞納がかさみ、弁護士と税理士の2つの資格を返上した。

 A子さんは、「引きこもり」というカテゴリーには当てはまらないかもしれないが、抱える課題は女性当事者のメカニズムと本質的に共通しているように思う。

 子どもの頃は母親から虐待を受けてきて、会社ではセクハラやパワハラの被害に遭った。

 司法試験に合格し、大手系列企業の「社内弁護士」として契約社員になったものの、親会社からの出向者による誹謗中傷などから、A子さんの仕事は極端に減少。毎日、職場に行っても、ほとんどすることがなくなり、A子さんも雇い止めとなった。

 以来、資格による性差別を感じている。

 これから先、「協調できる人と連携して、打開策を探りたい」と頑張ってきた。

 以前の記事を掲載した後、たくさんの読者から問い合わせやオファーなどをいただいたため、筆者がA子さんの意向を聞いたうえで、仲介する作業もしてきた。

 しかし、A子さんによると、弁護士会の会費は月5万円弱。滞納は1年近くに及んだ。会費が高いうえに、仕事がない場合の相談や会費減免などの措置がなかったことも、廃業を決断せざるを得なかった背景にあったという。

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池上正樹 [ジャーナリスト]

通信社などの勤務を経て、フリーのジャーナリストに。主に「心」や「街」を追いかける。1997年から日本の「ひきこもり」界隈を取材。東日本大震災直後、被災地に入り、ひきこもる人たちがどう行動したのかを調査。著書は『ひきこもる女性たち』(ベスト新書)、『大人のひきこもり』(講談社現代新書)、『下流中年』(SB新書/共著)、『ダメダメな人生を変えたいM君と生活保護』(ポプラ新書)、『あのとき、大川小学校で何が起きたのか』(青志社)など多数。TVやラジオにも多数出演。厚労省の全国KHJ家族会事業委員、東京都町田市「ひきこもり」ネットワーク専門部会委員なども務める。YAHOO!ニュース個人オーサー『僕の細道』

 


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「会社に行けない」「働けない」――家に引きこもる大人たちが増加し続けている。彼らはなぜ「引きこもり」するようになってしまったのか。理由とそうさせた社会的背景、そして苦悩を追う。

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