パワハラ、セクハラ、ソーハラ、マタハラ……。昨今は、これまであまり問題視されてこなかったコミュニケーションにも「ハラスメント」のレッテルが貼られるようになりました。課長は、どうすれば労働問題に巻き込まれずに日々のマネジメントに注力できるのか? 国内企業と外資系企業の人事部でサラリーマン経験がある労働問題解決の第一人者が、事例とともに実践的な「法律の使い方」をお伝えします。

「課長が負けた裁判」に学ぶマネジメント術(1)<br />~相手が明確に拒否しなくてもセクハラになる~

海遊館事件(最高裁一小 平成27年2月26日判決)

業務中に女性職員にセクハラ発言を繰り返す2人の課長代理。
1人の発言は、以下のようなものでした。

「もういくつになったん。結婚もせんでこんな所で何してるの。親、泣くで」
「30歳は22、23歳の子から見たらおばさんやで」
「もうお局さんやで。怖がられてるんちゃうん」
「お給料足りんやろ。夜の仕事とかせえへんのか。時給いいで」


男性職員の名前を複数挙げ、こんな発言もありました。

「この中で誰か1人と絶対結婚せなあかんとしたら誰を選ぶ?」
「地球に2人しかいなかったらどうする?」


もう1人の課長代理は、自分と不倫相手との性体験を別の女性職員に告白しました。

「俺のんでかくて太いらしいねん。やっぱり若い子はそのほうがいいんかな」
「嫁とは何年もレスやねん。でも俺の性欲は年々増すねん。何でやろうな」


こうした言動を、会社はセクハラと認定し、それぞれ出勤停止30日間と10日間の懲戒処分と降格。

ところが2人の課長代理は、この処分を不服として提訴しました。

「出勤停止は懲戒解雇に次いで重い処分だ」
「事前の注意や警告をしないで処分したことは不当だ」
というロジックです。

裁判所は、発言内容が就業規則で禁止されたセクハラに当たると認定。
「弱い立場にある女性職員に強い不快感を与える発言を繰り返し、セクハラ
行為をしたことは悪質だ」として処分が有効と判断されました――。