労働の質を改善する「マインドフルネス」

 4月になって新年度を迎え、満開の桜の下を歩いていると、自ずと心機一転がんばろうという気分になるから不思議だ。だが急に張り切りすぎてストレスを増やし、五月病にでもなってしまっては元も子もない。なにごともバランスが大切だ。

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 ストレスといえば、厚生労働省の調べによると2015年度は過労が原因の精神障害が労災と認定された件数が、過去最多になったそうだ。やはり過労により起こるとされている脳・心臓疾患の労災認定数と比べると、倍以上の数字になっている。残念なことに、仕事のストレスが原因で「心の病」を発症する人は増加傾向にあるようだ。

 意外なことに、精神障害で労災認定された人の残業時間数をみると「20時間未満」が一番多い。すなわち、長時間労働が精神障害を起こす主な原因ではないということだ。

 労働量を適正に抑えるのももちろん重要だろう。だが、労働者が健やかな精神状態で力を発揮できるような「労働の質」の向上も図っていかなければならないということではないか。

 現代人の労働は、肉体労働ではなく頭脳労働が中心となってきている。ゆえに本書の著者の石川善樹氏は、労働の質を向上させるためには、「疲れない脳をつくる」ことが重要だと説く。

 石川氏は、東京大学医学部を卒業後、米国ハーバード大学公衆衛生大学院を修了し、自治医科大学で博士号を取得した予防医学研究者だ。また、株式会社キャンサースキャン、株式会社Campus for Hの共同創業者でもあり、行動科学やヘルスコミュニケーションを活用しながら、ビジネスパーソンを対象にしたヘルスケア、ウエルネスの講演、執筆活動を幅広くおこなっている。

 本書で石川氏は、ストレスを溜めず、スピーディーかつイノベーティブに働く方法として、アメリカのシリコンバレーで広まりつつある「マインドフルネス」を、最新の脳科学の裏づけとともに紹介している。