背伸びをしない“自然さ”が強み
自営業者の子息が持つ商売資質

 最初に、熊本県の「ワサモン」の話を聞いた時、筆者としては「全国各地にある起業家支援との差」が理解できなかった。

 インターネット上の情報では、起業を支援するセミナー、資金調達を促すビジネスコンテストなど、“ごく一般的なエコシステム”にしか見えなかったからだ。

 だが、今回の熊本での現地取材で見えてきたのは、「皆が等身大で、自然体で物事を考えている」という点だ。

『SOJO ベンチャーラボ」に隣接する1階スペースでは、機械系学科と施設を共有してプロトタイプの製作が可能 Photo by Kenji Momota

 そのなかでも、「ワサモン」との連携度合いが強い、崇城大学・起業家育成プログラムで話を聞いた学生起業家たちの“自然さ”が印象的だった。同大学では、アントレプレナーシップ(起業家精神)を重んじ、2014年4月から起業家育成プログラムを開始。1年生に、選択科目として「ベンチャー起業論I、II」を創設。5学部10学科の全800人のうちの半分にあたる400人が受講した。

 受講生の中には実際に起業しようという学生がおり、その受け皿として2014年10月に「起業部」を創設すると、40人が入部。また、部活動を行なう学内施設は、「SOJO ベンチャーラボ」がある。これは、プレゼンからプロトタイプ製作までを支援する、いわゆる「リーンスタートアップ」だ。

崇城大学・起業部から生まれた、焼酎リキュール「ごくりくま」 Photo by Kenji Momota

 起業部が発足してから1年半で、地元の球磨焼酎と果物によるリキュールの販売事業「ごくりくま」、豆乳スムージーの販売事業「Soy Deli」、自宅を出る際に玄関で忘れ物をチェックする次世代スマートエントランス機能の「Good Morning」、足に装着するパーソナルモビリティ「Hero leg」等がプロジェクトとして立ち上がっている。なかでも「ごくりくま」は、具体的な販売を開始する段階に達している。

 こうしたアイディアを持つ起業部・部員たちに話を聞いてみると、学生とは思えぬ“営業感覚”を備えていた。なぜなら、彼らの多くは自営業者の子息。小さい頃から親の背中を見て育っており、起業を“自然体”で考えられるのだ。

崇城大学の学生起業支援プロジェクトの 「SOJO ベンチャーラボ」。総合教育センター・准教授の中島厚秀氏を囲む起業部の学生たち Photo by Kenji Momota

 総合教育センター・准教授の中島厚秀氏は「本学の学生の3割から4割は自営業者の子息。彼らにとっては“第二創業”というイメージで。また、工学系が主体の本学では、就職口はシステムエンジニアが多いという現実のなか、“その他の選択肢”として、起業を考えてほしい」と語る。

 同氏自身がサラリーマンから起業した経験を踏まえて「スタートアップでいま、最も重要な人材は技術、デザイン、マネージメントのすべてを理解するプロデューサーだ」とも指摘した。