経営×物流

ヤマト運輸が過疎地のバス路線を救う「客貨混載」の試み

発案はヤマト運輸
国からの補助金なしで実現した協業

 次に宮古~重茂車庫間だが、こちらもバスの空きスペースを有効活用できるのはもちろんとして、ヤマト側にはまた別のメリットもある。

 重茂半島を担当するセールスドライバー(以下、SD)は、従来は午後の便で入る荷物を宮古営業所までいったん取りに戻っていたが、それらの荷物がバスで重茂車庫まで届くようになったことで、わざわざ街まで戻る必要がなくなったのだ。

 節約できたのは、片道約18kmの往復、時間にしておよそ80分。おかげで、SDは重茂半島での滞在時間を伸ばし、接客に多くの時間を充てられるようになった。たとえば、お年寄りがスーパーに頼んだ買い物をSDが届けるついでに安否確認もする「まごころ宅急便」というサービスに、より多くの時間を割けるようになったのだ。

 朝日新聞の記事によれば、そうして地域住民とSDの交流が密になった効果か、扱う荷物の量が1.5倍に増えたのだという。サービス向上で、他社よりヤマトを選んでもらえるようになったということだ。

 バス会社と宅配便事業者の双方にメリットのあるこの客貨混載事業だが、協業の呼びかけをしたのはヤマト運輸の方だった。じつは20年以上前の1993年に、同社は同じく岩手県の北上~湯田町間(約43km)で客貨混載に着手しており、その蓄積があったからだ。

 北上~湯田町間のその事業は「宅配バス」と呼ばれ、今回の盛岡~宮古間の「ヒトものバス」と同じく、宅急便の大規模拠点間の大型トラックによる幹線輸送を大型バスに置き換えたものだった。

 宅配便には全般に、集荷が夕方に集中し、配達は午前中が多くなるという傾向がある。そのため、拠点間の昼間の幹線輸送はそもそも運ぶべき荷物が少なく、コスト高になりがちだ。ヤマトの北上~湯田町間の運行コストは1便につき8000円ほどだったが、北上を6時30分に出る便の荷物数が平均115個、湯田町を18時に出る便が平均134個であるのに対して、湯田町を10時に出る便では平均4個と極端に少なく、1個あたり2000円ものコストがかかっていた。

 その昼間の幹線輸送便をなくす代わりに、ほぼ同じ経路を走る路線バスに荷物を委ねた。バスも昼間の便は空いているから、有休スペースを利益につなげられるメリットがこちらにもあった。バスを改造(費用約20万円)して専用の荷室を設けたのも今回の「ヒトものバス」と同じで、フォークリフトでパレットごと積み降ろしができるようにしたのもやはり同じだ。おかげで、荷物が多い場合でも5分あれば積み降ろしが済むという。

 そして何より特筆に値するのが、その「宅配バス」も、今回の北上~重茂半島間の客貨混載事業も(そして後述する宮崎県での事業も)、国からの補助金はいっさいなしで、民間の知恵と工夫によって実現したものであることだ。

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