過疎地の公共交通をどう残すべきか? 以前の記事では、ヤマト運輸が岩手県と宮崎県でバス会社と協業して宅急便の拠点間輸送の一部をバスに委ねる取り組みを紹介した。また、桃田健史氏による「エコカー大戦争」の連載第218回では、広島県安芸高田市で実証運行されている、日中の路線バスのオンデマンド化と、市の外れにある過疎地域での白ナンバー車による地域交通システムの組み合わせが紹介された。
今回、新たに紹介したいのは、京都府の丹後半島での取り組み。半島の全域で2006年から運行されている運賃均一の「200円バス」と、15年10月に京丹後市の旧網野町地区と旧久美浜町地区でスタートした「EV乗合タクシー」(運賃は1人500円+α)だ。
前者は明快な運賃設定で地域需要を掘り起こし、乗客数2倍超という成果をあげたほか、丹後半島を周遊する観光客にも手軽な足を提供している。
そして後者は、タクシー空白地をなくすために日産リーフ2台を乗合タクシーとして用意したもので、地域のお年寄りの足として、また北近畿タンゴ(京都丹後)鉄道の網野駅・久美浜駅に降り立つ観光客にバス以外の交通手段を提供するという、ふたつの使命を担っている。
丹後半島と聞いても、関東の人には馴染みが薄いかもしれない。京都府最北端の日本海に突き出た半島で、夏場の海のレジャー、冬場のカニなど、観光資源も豊富だ。面積は約840平方kmと、東京23区(約621平方km)よりひとまわり大きく、伊豆半島(約1430平方km)の半分強に相当する。
かつてNHK朝ドラの舞台にもなった伊根の舟屋から久美浜湾に至るまで、津々浦々に名所旧跡のある魅力的な土地なのだが、東に日本三景の天橋立、西に兵庫県の城崎温泉と、集客力絶大な観光地が両端に存在することから、半島そのものを巡る観光需要はいまひとつ掘り起こせていない現状があった。
そしてこの地でも、高齢化と過疎化は進行している。丹後ちりめんの生産量は1973年の1000万反をピークに、2013年には44万反を切るまでに落ち込み、第2次産業の就業人口もその40年ほどで半減(55.1%減)。地場産業は衰退の一途をたどっている。京丹後市域の人口も1950年の8万人超をピークに減り続けて2010年国勢調査では6万人を割った。高齢化率は約31%で、それが22年には約37%になると見込まれている。
そのためか、京丹後市の旧丹後町地区(半島先端部)では08年にタクシー会社の営業所が閉鎖され、12年には旧久美浜町地区で、13年には旧網野町地区でもタクシー営業所が店じまいした。観光地でありながら、市域の半分がタクシー空白地となってしまったのだ。そのため、網野駅と久美浜駅では旧町域の中心となる駅でありながら、観光列車が到着しても客待ちのタクシーがいないということになってしまった。