右を向いても左を向いても、電子書籍が取りざたされている。ところがこんな時代に数々の変化球を投げて注目を集めているのが、書店チェーン大手のバーンズ&ノーブルだ。

 書店チェーン大手と言えば、日本では紀伊国屋や旭屋書店などを思い浮かべるだろう。バーンズ&ノーブルも、大規模な路面店を全国に展開しているという点では、同じような存在である。

 ところが、電子書籍時代の到来で書店の存続が危うくなってきたという時になって、俄然、このチェーンはあの手この手で工夫を凝らして、アメリカの本好きを感心させているのである。

iPad対キンドルの影で
コツコツとNookを広める

 まずは、電子書籍リーダーから始めよう。

 バーンズ&ノーブルが、アマゾンの電子書籍リーダー、キンドルに対抗するNook(ヌック)を発売したのは昨年末だ。2年以上も先行して話題を独占していたキンドルに勝てるわけはないだろうと、誰もが思っていたはずである。

 スマートなデザインのキンドルと違って、Nookはモノクロ画面とカラー画面が組み合わされた、何とも奇妙な見た目である。データ・センターや配信インフラでは、IT企業なみのパワーを誇るアマゾンに対して、路面の書店チェーンを営んでいただけのバーンズ&ノーブルが、どの程度電子書籍をうまく配信できるのか、その力は未知数だった。

 Nookは、2009年のクリスマス商戦では、製造数が足りずにすぐ品切れに。おかげで「大いに売れたクリスマス・プレゼント」の王座を、キンドルに譲るはめとなった。