好きなだけ農奴を支配できる。そう、GAFAMならねPhoto:PIXTA

スマートフォンの登場によって、世界のあらゆる情報にアクセスできるようになり、私たちの世界は大きく変わった。しかし、ユーザーが便利さを追求した代償は大きすぎた。GAFAに支配された世界の行き着く先には、恐ろしい未来予想図が待ち受けているのだ。※本稿は、ヤニス・バルファキス著、関 美和訳『テクノ封建制 デジタル空間の領主たちが私たち農奴を支配する とんでもなく醜くて、不公平な経済の話。』(集英社)の一部を抜粋・編集したものです。

iPhoneがアップルを
1兆ドル企業へと成長させた理由

 1950年代にレント(編集部注/地代・使用料などの権益)に復活のチャンスを与えたのがブランディングだとすると、2000年代に利潤に対する逆襲のチャンスを与えたのはクラウド資本(編集部注/インターネットの登場によって生まれた新しい形の資本)の台頭だった。ここでレントが世紀の大復活を遂げる舞台が整った。アップルはその立役者になった。iPhone以前は、スティーブ・ジョブズのガジェットはロールスロイスやプラダの靴とそう変わらない、典型的なブランド・レントを反映したプレミアム価格の高級品だった。

 アップルは、美しいデザインと使いやすさに定評のあるインターフェイスを備えたラップトップ、デスクトップ、iPodを販売することで、マイクロソフトやIBMやソニーや、そのほか無数の中小競合他社との血みどろの戦いに生き残り、莫大なブランド・レントを徴収できるようになった。だが、アップルを1兆ドル企業へと成長させたブレイクスルーはiPhoneだ。それが単に優れた携帯電話だからではなく、iPhoneのおかげでアップルは秘められた宝箱を開ける鍵を手にしたのだ。その宝箱とはクラウド・レントだ。