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トヨタが強いのは「トヨタ生産方式」のせいではない!

~『トヨタの強さの秘密』(酒井崇男著)を読む

情報工場
【第15回】 2016年4月16日
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肝心なのは「製品開発の仕組み」

 日経新聞によると、米高級車市場でトヨタ自動車の「レクサス」がドイツ勢を追い上げているそうだ。2016年1~3月の販売台数でBMWを抜き、前年同期の3位から2位に順位を上げた。1位のメルセデス・ベンツにも3月の販売台数では僅差に迫ったという。

 トヨタは米国においても「日本品質」にこだわった生産ラインづくりを行っている。それが高級車市場で功を奏しているようだ。たとえばボディの歪みを現地作業員に手で触って識別させたり、内装の複雑な模様をミシンで縫う従業員には、左手で折り紙の「ねこ」を折らせるなど、厳しい訓練に通った人だけに作業をさせている。これは「人間の判断に勝るものはない」という考え方に基づいているそうだ。

『トヨタの強さの秘密』 酒井 崇男著 講談社(講談社現代新書) 262p 880円(税別)

 このような話を聞くと、「人の生産性」にも着目して組み上げられた「トヨタ生産方式(TPS: Toyota Production System)」がやはりトヨタの強さの源泉なのだと思うかもしれない。しかし本書の著者である酒井崇男氏は、トヨタの本当の強さは生産方式ではないと主張する。

 酒井崇男氏は、1973年愛知県岡崎市生まれ。大手通信会社研究所を経て独立。グローバル・ピープル・ソリューションズを立ち上げ、代表取締役として人事・組織・製品開発戦略のコンサルティングを行っている。またリーン開発・製品開発組織のタレント・マネジメントについて、国内外での講演・指導など、精力的に活動している。著書に『「タレント」の時代』(講談社現代新書)がある。

 本書の帯にも「トヨタは生産方式で儲けていない」と書かれている。どんなに優れた生産方式も「売れるモノ」があって初めて意味を持つ。すなわち、売れるモノを作る「製品開発の仕組み」こそがトヨタの強さの秘密であり、それがない単独のトヨタ生産方式には意味がない。

 いくら高品質でも売れないモノを作り続けるのは無意味などころか、かえって害になるだろう。多くの日本企業は、肝心な部分を学ばずに、後ろ半分の生産方式だけを取り入れるから失敗するのだと、酒井氏は説明する。

 トヨタの製品開発の仕組みを「トヨタ流製品開発(TPD: Toyota Product Development)」という。よく考えてみると、トヨタ生産方式(TPS)についての話はよく耳にするが、TPDという言葉には馴染みがない。いったいどのような方式なのだろうか。

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浅羽登志也

情報工場シニアエディター。1989年、京都大学大学院修士課程修了後、リクルート入社。同社スーパーコンピュータ研究所にてインターネットに関する研究に従事。1992年、株式会社インターネットイニシアティブ(IIJ)に創業メンバーとして入社。インターネット黎明期からサービス開発・技術開発に携わる。IIJは、日本で最初にインターネット接続の商用サービスを開始したインターネットサービスプロバイダで2006年12月東証一部上場。1999年、IIJ取締役、2004年より2009年までIIJ取締役副社長。2008年より2015年までIIJイノベーションインスティテュート代表取締役社長。2015年7月よりIIJフェロー。情報編集にも興味を持ち、2007年より松岡正剛氏主催のイシス編集学校で松岡流編集術を学ぶ。現在イシス編集学校の師範を務める。2010年に軽井沢へ転居。自然農法で、自家用の蕎麦や大豆を栽培中。

 


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