板橋区には「ヘソ」がない。かつて板橋宿として栄え、今も公共施設が集まる板橋地区がヘソと言えばヘソではあるが、人口54万人で「中心」と呼ぶには少々パンチに欠ける。

 これが、閑静な住宅街が続く常盤台、城北工業地帯発展の中核となった志村、区立の植物園がある赤塚となると、知名度不足が否めない。駅の乗降客が一番多い成増も、街としての賑わいはもの足りない。高島平も、昭和40年代前半までは一面の農地で、長い板橋区の歴史に照らすとまだ「新参者」という印象だ。

東京有数の工業集積地は
日本最大の印刷業のメッカ

板橋区――パンチに欠ける街がトップを狙える「病院」「若者」「モンゴル人」という強み

 板橋区は、大田区と並ぶ東京有数の工業集積地である。工場、研究所など製造現場の機能が集積されており、事業所数こそ9位だが、従業者数、製造品出荷額は共に大田区に次いで第2位だ。

 ただし、大田区とは性格が異なる面もある。大田区の工業は中小企業がリードする。それに対し、板橋区には大工場が多い。このため、1事業所当たりの従業者数や1事業所当たりの製造品出荷額は、トップに躍り出る。

 生産効率も高い。従業者1人当たりの出荷額は2613万円で、北区の2624万円と並んでツートップのポジションにある。