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加藤嘉一「中国民主化研究」揺れる巨人は何処へ

中国共産党の反腐敗闘争が
経済改革にもたらす逆効果

加藤嘉一
【第75回】 2016年4月26日
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反腐敗闘争はいつまで続くのか?
2016年も続く高級官僚の「落馬」

習近平総書記が続けてきた反腐敗闘争。足もとでは中国の経済成長・改革に負の効果をもたらし始めたように見える

 「加藤さん、反腐敗闘争はいつまで続くと思いますか? 」

 最近はあまり聞かれなくなったが、これは1~2年ほど前まではしばしば耳にした問題提起である。

 第十八回党大会(2012年11月)以来、習近平総書記と王岐山・中央規律検査委員会書記はスクラムを組みながら、二人三脚で反腐敗闘争を続けてきた。そんな闘争の近況が気になるのは、共産党体制内で行われる権力闘争、全国各地の党・政府・国有企業の幹部や役人が摘発・処分されるプロセスが、中国人、外国人を問わず、この国と付き合っていく上で決して軽視できないファクターであるからだろう。

 私自身、反腐敗闘争という現象あるいは側面は、中国共産党の現在地、党内権力闘争、そして改革開放・構造改革などの行方を占う上で極めて重要であると考えている。本稿では、久しぶりに“この問題”を扱ってみたい。

 まず参考までに、18党大会後に“落馬”(筆者注:汚職や腐敗が原因で摘発され、党組織としての処分を受けること)した高級官僚(筆者注:中央次官級・地方副省長級以上の高官を指すものとする)の数をレビューしておきたい。

 2012年11月~2013年末が19人、2014年が39人、2015年が29人。また党軍関係的に同級以上の解放軍幹部では、2012年11月~2015年末のあいだに41人が落馬している(筆者注:徐才厚、郭伯雄・両元中央軍事委員会副主席は解放軍幹部としてではなく、党高級官僚として換算)。

 このように見てくると、反腐敗闘争は、特に高級官僚の落馬という視角からすればピークは過ぎていると言える。一方、昨年1年間だけで29人もの高級官僚が処分されていることを考えれば、闘争はいまだオンゴーイングだとも見て取れる。

 2016年に入ってからも、高級官僚が断続的に落馬している。

 3月、全国人民代表大会(全人代)が開幕した直後、王珉・遼寧省共産党委員会前書記、全人代文科衛生委員会副主任が落馬した。地方の書記というポジションは高級官僚の中でも群を抜いて高い職位ということもあり、世論は騒然とした。全人代や同時に開催されていた政治協商会議に参加した各指導者たちは、「反腐敗闘争が終わっていない証拠。断固として党中央の決定を支持する」というコメントを出していた。

 毎年、全人代期間中の落馬状況には注目が集まってきた。恒例の「政府活動報告」を発表した李克強首相は、同報告のなかで「断固として腐敗を撲滅していくこと」「官の汚職や腐敗を徹底的に取り締まっていくこと」を強調した。

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加藤嘉一 

1984年生まれ。静岡県函南町出身。山梨学院大学附属高等学校卒業後、2003年、北京大学へ留学。同大学国際関係学院大学院修士課程修了。北京大学研究員、復旦大学新聞学院講座学者、慶應義塾大学SFC研究所上席所員(訪問)を経て、2012年8月に渡米。ハーバード大学フェロー(2012~2014年)、ジョンズ・ホプキンス大学高等国際問題研究大学院客員研究員(2014〜2015年)を務めたのち、現在は北京を拠点に研究・発信を続ける。米『ニューヨーク・タイムズ』中国語版コラムニスト。日本語での単著に、『中国民主化研究』『われ日本海の橋とならん』(以上、ダイヤモンド社)、『たった独りの外交録』(晶文社)、『脱・中国論』(日経BP社)などがある。

 


加藤嘉一「中国民主化研究」揺れる巨人は何処へ

21世紀最大の“謎”ともいえる中国の台頭。そして、そこに内包される民主化とは――。本連載では、私たちが陥りがちな中国の民主化に対して抱く“希望的観測”や“制度的優越感”を可能な限り排除し、「そもそも中国が民主化するとはどういうことなのか?」という根本的難題、或いは定義の部分に向き合うために、不可欠だと思われるパズルのピースを提示していく。また、中国・中国人が“いま”から“これから”へと自らを運営していくうえで向き合わざるを得ないであろうリスク、克服しなければならないであろう課題、乗り越えなければならないであろう歴史観などを検証していく。さらに、最近本格的に発足した習近平・李克強政権の行方や、中国共産党の在り方そのものにも光を当てていく。なお、本連載は中国が民主化することを前提に進められるものでもなければ、民主化へ向けたロードマップを具体的に提示するものではない。

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