ダイヤモンド社のビジネス情報サイト
ニューロビジネス思考で炙り出せ!勝てない組織に根付く「黒い心理学」 渡部幹

「日本流おもてなし」は外国人観光客に本当に好評か

渡部 幹 [モナッシュ大学マレーシア校 スクールオブビジネス ニューロビジネス分野 准教授]
【第49回】 2016年5月11日
著者・コラム紹介バックナンバー
1
nextpage

日本人にとってはありふれた食材でも
マレーシア人は興味津々

 本連載「黒い心理学」では、ビジネスパーソンを蝕む「心のダークサイド」がいかにブラックな職場をつくり上げていくか、心理学の研究をベースに解説している。

日本人の好むおもてなしが、必ずしも外国人にウケるとは限らない。外国人の好む観光とは、一体どのようなものだろうか?

 先日、日本の長野県安曇野のわさび業者の方たちがマレーシアに来て、現地の人々に日本の「本わさび」を紹介した。

 マレーシアでは日本食は高級食として人気があり、首都であるクアラルンプールやその近郊には実に616軒の日本食レストランが存在する。日本でもおなじみの吉野家や、はなまるうどん、すき屋などのチェーン店もある。しかし、一番人気の日本食はやはり寿司だろう。回転すしチェーン店はいくつもあり、いつも地元の人でにぎわっている。

 そのような寿司屋では、粉わさびが使われる。大抵の場合、子どもも食べるので、寿司はさび抜きで、その代りにテーブルやカウンターに大量の練られた粉わさびがおいてある。辛い物好きのマレーシア人は、大量の醤油に大量の粉わさびを入れてどろどろになったわさび醤油に、寿司をつけて食している。

 昨今の日本では、チューブわさびですら、本わさびか、本わさび風味のものが主流であるのに対して、マレーシアでは(そして多分米国でも)、わさびといえば粉わさびを練ったものだ。粉わさびは西洋わさびをベースに、着色風味づけしたものである。当然ながら、日本伝統の本わさびとは異なる。

 本わさびを用いる店もあるが、非常に限られた高級店のみである。本わさびは新鮮野菜なので輸入が難しく、関税の問題もあって、普及させるのが難しいと思われていた。だが、最近では本わさびの人気が台頭し、欧米の高級レストランでも用いるケースが増えてきたという。

 マレーシアでも本わさびの美味しさを知ってもらうために、日本のわさび業者がやってきて、イベントを開催したのだ。

 このとき、現地の日本人コーディネーターがどうしても取り入れてほしいと業者にお願いしたことがあった。それは「わさびのすりおろし体験」だった。本わさびを現地のマレーシア人にすりおろしてもらい、クラッカーに乗せて試食してもらうというものだ。

 こう聞くと、日本人としては「なんていうことのない体験」に思える。だが、これがびっくりするほど盛り上がったのだ。

 まず、大抵のマレーシア人は、わさびの原型を知らない。練った粉わさびが彼らにとっての「本物のわさび」なので、自分たちがいままで食べていたものが、本当のわさびではなかったことに、まず驚く。

 そして、本物のわさびを味わうだけではなく、「つくる」体験ができることを、とても喜ぶのだ。使うおろし金も、一般的なものではない。日本人にとっては当たり前の鮫皮おろしも、彼らにとっては初めて見るものだ。興味津々である。

1
nextpage
関連記事
スペシャル・インフォメーションPR
クチコミ・コメント

DOL PREMIUM

PR

経営戦略最新記事» トップページを見る

最新ビジネスニュース

Reuters

注目のトピックスPR

話題の記事

渡部 幹(わたべ・もとき)
[モナッシュ大学マレーシア校 スクールオブビジネス ニューロビジネス分野 准教授]

UCLA社会学研究科Ph.Dコース修了。北海道大学助手、京都大学助教、早稲田大学准教授を経て、現職。実験ゲームや進化シミュレーションを用いて制度・文化の生成と変容を社会心理学・大脳生理学分野の視点から研究しており、それらの研究を活かして企業組織にも様々な問題提起を行なう。現在はニューロビジネスという大脳生理学と経営学の融合プロジェクトのディレクターを務めている。代表的な著書に『不機嫌な職場 なぜ社員同士で協力できないのか』(共著、講談社刊)。その他『ソフトローの基礎理論』(有斐閣刊)、『入門・政経経済学方法論』、『フリーライダー あなたの隣のただのり社員』 (共著、講談社)など多数。


ニューロビジネス思考で炙り出せ!勝てない組織に根付く「黒い心理学」 渡部幹

この連載の趣旨は、ビジネスマンのあなたが陥っている「ブラック」な状況から抜け出すための「心」を獲得するために、必要な知識と考え方を紹介することにある。社員を疲弊させる企業が台頭する日本社会では、「勝てない組織」が増えていく。実はその背景には、マクロ面から見た場合の制度的な理由がある一方、日本人の持つ国民性や心理もまた、重要な要因として存在する。そうした深いリサーチが、これまで企業社会の中でなされてきただろうか。本連載では、毎回世間で流行っているモノ、コト、現象、ニュースなどを題材として取り上げ、筆者が研究する「ニューロビジネス」的な思考をベースに、主に心理学や脳科学の視点から、その課題を論じていく。あなたは組織の「黒い心理学」を、解き明かすことができるか。

「ニューロビジネス思考で炙り出せ!勝てない組織に根付く「黒い心理学」 渡部幹」

⇒バックナンバー一覧