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長寿企業の秘密

この先100年を生き抜く長寿企業になる3つの条件

松江英夫 [デロイト トーマツ コンサルティング パートナー/中央大学ビジネススクール大学院戦略研究科客員教授]
【連載の手引き編】 2016年5月31日
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先を見通せない時代をどう生き抜くか

松江英夫(まつえ・ひでお)
デロイト トーマツ コンサルティング パートナー/中央大学ビジネススクール大学院戦略研究科客員教授(「実践・変革マネジメント論」)、事業構想大学院大学客員教授。 「経営変革」に関わる戦略・組織領域のテーマ(成長戦略、M&A、イノベーション、グローバル組織再編)などを多数展開。主な著書に『自己変革の経営戦略 ‐ 成長を持続させる3つの連鎖』『ポストM&A成功戦略』、共著に『クロスボーダーM&A成功戦略』(いずれもダイヤモンド社)など。

 「永続的な企業をつくりたい」「わが社がこの先も生き残っていくためにはどうすればいいか」と多くの経営者は考えているはずだが、それはこれまで以上に難度の高いテーマになっている。遠い将来を見通すことが非常に難しい時代になったからだ。

 その背景には大きく2つの要因があるだろう。ITの登場で、経営環境はかつて経験したことのないほど変化のスピードが速まったこと、またこれによって変化の方向性が読みにくくなったことである。

 最近、新しいプレイヤーによる破壊的な変化をよく見かける。クルマの配車サービスを手掛けるウーバーなどは好例だ。国内外を問わず、業界の垣根は低くなるばかりだ。一方、製品やサービスのライフサイクルは短期化している。いったん優位性を確立したとしても、長期にわたってそれを持続することは容易ではない。

 加えて、グローバル化という流れも、企業の将来を不確かなものにしている。好むと好まざるとにかかわらず、多くの企業は成長に向けてグローバル化に舵を切らざるをえない。新しい土俵の上で戦うからには、これまでとは異質のリスクと向き合う覚悟、リスクをコントロールする仕組みも必要になる。

 これほどまでに将来を予測しにくくなってしまうと、企業の戦略もおのずと近視眼的で消極的になる。そのため、最近は多くの企業が10年先、20年先の長期ビジョンを打ち出さずに、3年先の中期目標のみを示すようになってしまった。だが、3年程度の中期目標が自社のゴールになっている限り、「永続的な企業」の姿などとても描くことはできない。

 このような不確実な時代だからこそ、常に長期的展望を描き続け、方向性を明確にし、そのうえで短期的な成果を積み上げていかなくてはならないのだ。経営には常に一歩先と将来を併せ見る視点が求められる。

 そのうえで、もっとも必要となるのは、「自己変革力」である。時代の変化に適応し、時代の要請に常に応えられる「変わり続ける力」が組織にあれば、どんな時代でも生き抜くことができるだろう。

「長寿企業の経営」にこそ生き抜くヒントが隠されている

 日本には、長い歴史を経て今なお生き残っている「長寿企業」が多く存在する。酒造メーカーなどはその一例だ。数百年の伝統を守りながら単一商品で勝負し続けるのは簡単なことではないが、今ある商品を愛好する顧客を大切にしながら、先を見据えて原料や製造手法の開発・改良を繰り返し、ときに伝統を打ち破ることもいとわず自ら変化し、新たな顧客を獲得し続けている。

 また、グローバルでみても、トーマス・エジソンが創業者であるGEは、企業の成長と存続のために変わり続け、生き残り続けている長寿企業の代表だ。時代の変化に応じて事業の「選択と集中」を繰り返し、そのためには、偉大な創業者を象徴する家電事業であっても、また稼ぎ頭と位置づけられてきた金融事業であっても売却・撤退の判断を下す。一方で将来を見据えて製造業という本業回帰の方針を打ち出す。常に時代の先を読み、事業ポートフォリオを変革しながら生き残り、今も成長し続けている。

 つまり長寿企業には、先を見通しにくい時代にも「自ら変化し続け、生き抜いていく経営の秘訣」、すなわち、“自己変革力の源泉”がそこに存在するのだ。

 私は、これまでコンサルタントとして数多くの企業の経営改革を手掛けてきたが、自己変革力があり、持続的成長を遂げる企業には、(1)「今と将来を併せ見る『時間軸』」、(2)「顧客や外部に目を向け、常に変化に対応するための『市場とのつながり』」、そして、(3)「経営陣同士、経営と現場、部門間が健全である『組織の作り方』」があると考えてきた。

 そこで、本連載では、先が読めない厳しい時代の中で企業が生き抜くヒントを探るべく、「長寿企業」の経営をこの3つの観点から解剖する。具体的には、次のような視点を持って迫りたい。

(1)長寿企業の【「時間軸」の捉え方】
 企業経営は理念や哲学といった揺るぎなく不変なものを持ちながら、常に長期的展望を描き続けて方向性を明確にしつつ、足元の短期的な結果も出し続けることが重要だ。

 では、長寿企業の経営者は、「長期」「短期」とは何年先を見据えているのか、また、短期的変化と長期的変化への対応はどう予測し、どう判断するのか。そうした経営戦略の「時間軸」の捉え方は時代を生き抜く長寿を実現する土台になっているはずだ。

(2)長寿企業の【「市場」とのつながり方】
 市場で息長く支持される企業は、顧客と持続的な関係を築いている。時々刻々と変化する顧客ニーズをいかに的確に捉え、先取りできるかがカギを握る。そのとき、過去の成功事業を手放したり、自己否定する覚悟が求められるだろう。変化する市場・顧客に向き合いながら「変えるもの」と「変えないもの」を見極め、選択し続けていく必要がある。その判断基準とはどのようなものか。それを積み重ねた結果が、顧客との持続的な関係を築くことにつながり、長寿につながっているに違いない。

(3)長寿企業の【「組織」の作り方】
 企業が1つの方向を目指すとき、それを実現できる組織体制が不可欠だ。長寿企業ではどのような考えの下に組織作りをしているのか。また、組織を構成する個人はどんな人材であるのか、それをまとめるリーダー像とは? 長寿ならではの組織作りのカギとは一体何か。

 私自身は「常に自己変革できる個人」と、「上下関係の壁がなく、困難やリスクを乗り越える気概がある組織」が重要であると考えている。

 本連載では、毎回、日本を代表する長寿企業のトップを迎え、この「時間軸」「市場」「組織」という3つに関する問いをぶつけていく。そこから見える「長寿企業の秘訣」には、いかに時代と共に変わり続け、いかにこの先100年を生き延びるべきか、そのヒントが隠されているに違いない。

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デロイト トーマツ コンサルティング パートナー Strategy&Operationsリーダー。中央大学ビジネススクール大学院戦略研究科客員教授(「実践・変革マネジメント論」)、事業構想大学院大学客員教授。「経営変革」に関わる戦略・組織領域のテーマ(成長戦略、M&A、イノベーション、グローバル組織再編)などを多数展開。主な著書に『自己変革の経営戦略 - 成長を持続させる3つの連鎖』『ポストM&A成功戦略』、共著に『クロスボーダーM&A成功戦略』(いずれもダイヤモンド社)など。

 


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数多くの経営改革支援を手掛けてきたデロイト トーマツ コンサルティング パートナーの松江英夫が長期の経営ビジョンを持ち、時代の変化に対応しながら成長し続けてきた企業のトップに直撃、"長寿を可能にする経営の秘訣"を探る。長寿を実現するポイントとして経営戦略上の「時間軸の捉え方」「市場の変化への対応力」「組織の作り方」に注目し、この3点に対する考え方と実際に行なわれてきた経営について掘り下げる。

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