日本の養殖ブリが、海外へ羽ばたいている。
農林水産省が、財務省公表の貿易統計から取りまとめた「2015年農林水産物・食品の輸出実績」によると、水産物の輸出額は2014年から18.0%増の2757億円へと拡大。
その中でブリは、対前年比38%増の138億円で、水産物全体では4位、農林水産物においても10位と主要輸出品並みの存在である。
ブリ養殖日本一を誇るのは鹿児島県だ。2万466トン(平成26年漁業・養殖業生産統計)と11年連続日本一を誇り、県内の海面養殖魚生産量の約5割を占める。鹿児島県商工労働水産部水産振興課 技術主幹兼栽培養殖係長の外城和幸さんは、「昭和33年に試験養殖が始まり、温暖な気候、養殖に適した内湾が多くブリの稚魚であるモジャコが近海で獲れることから県内各地で盛んになりました」とそのきっかけを語る。
しかし近年、国内におけるブリ養殖を取り巻く状況は厳しい。消費と魚価低迷が続いているうえに、エサとなる魚粉の価格が高騰し、苦しい経営状況が続いているからだ。
「需要と供給のバランスが崩れた状態です。よって、余剰分を海外へ輸出する機運が高まっています」(外城さん)
実は鹿児島におけるブリ輸出の歴史は古い。そして、その先鞭をきったのは、鹿児島県長島町・東町漁業協同組合だ。「鰤王」ブランドで展開し、輸出のスタートは昭和57年。養殖魚としては日本初である。
さらに東町漁協は、現在も輸出にかけてはすさまじい勢いを見せている。なんと、海外ブリ輸出年間出荷量は19.5万尾、約16.5億円。実績は29ヵ国と、ここまで輸出を展開している漁協も珍しい。なんともグローバルな漁協なのだ。
20~30代の漁師が多い
若手が活躍する東町漁協
鹿児島県西北部に位置する長島町。長島本島をはじめとする離島で構成された町だ。
JR鹿児島本線・出水駅からバスに乗り、黒之瀬戸大橋を渡ると長島本島。入り組んだ海岸線のむこうに青い海原がひろがる風景を眺めること約40分。長島町役場に到着した。
「観光の目玉は『風景』です」と長島町生まれ、長島町育ちの長島町水産商工課主幹兼商工観光課係長の牧祐治さん。雲仙天草国立公園をのぞむ針尾公園からは、「薩摩松島」ともいわれる入り江に点在する緑の島々と青い海の素晴らしい景観を堪能できる。
基幹産業は水産業とじゃがいも、かんきつ類を主とする農業だ。
昭和40年代からはじまったブリ養殖で、長島町は大きな利益を得てきた。
「ブリは長島町の希望の星です」と牧さん。
長島町でも、日本各地同様、高齢化と人口減少に悩まされている。しかし、水産業においては話が明るいのだ。