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日本を元気にする経営学教室

ケーススタディ(後編)「工場長の苦悩」
品質立国だった日本企業の再生
神戸大学大学院経営学研究科教授 加登 豊

遠藤 功 [早稲田大学ビジネススクール教授 株式会社ローランド・ベルガー会長],加登 豊 [神戸大学大学院経営学研究科教授],成生達彦 [京都大学大学院経営管理研究部教授],河野宏和 [慶應義塾大学大学院学経営管理研究科委員長 慶応義塾大学ビジネス・スクール校長]
【第12回】 2010年8月30日
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 前回の掲載から2週間が経過した。お盆休み明けで仕事が忙しく、職場で同僚や先輩・後輩と議論する時間はなかったかもしれない。しかし、そのおかげで、人の意見に左右されずに考えることができたはずだ。

 さて、このケースを企業研修で使用すると、必ず次のような質問が出る。「石森製作所というのは、本当は、わが社のことですか。」 この質問は繰り返される。ということは、ケースはフィクションであるにもかかわらず、日本中の企業でケースに記述されているようなことが起こっているわけだ。このケースに記述されている問題の解決は、本当に難しい。しかし、解決の糸口はある。そのヒントは、「過去の呪縛から自らを解放する」ことである。ただ、これができないから、問題は解決できない。

設問に対する回答

 まずは、設問に関する私なりの回答をしめそう。

設問(1)ゼロディフェクトをめざすべきか、一定割合の欠陥を許容するか。

回答(1)精神論として、ゼロディフェクト(欠陥ゼロ)を目指すことは正しいが、実際の品質管理活動においてゼロディフェクトの達成は、著しく困難であるばかりでなく、対費用効果はきわめて悪い。品質管理活動への投資に見合った品質レベル(たとえば、千分の一とか万分の一)を設定し、欠陥品は、検査工程でチェックすることに経済合理性がある。品質を作り込むための諸活動を行うとともに、徹底的な検査を並行して実施しても、ゼロディフェクトはなかなか達成できない。

 品質管理活動にはコストがかかる。品質問題の発生を防止するための活動(品質管理、品質計画、品質管理教育・訓練、工程管理など)にかかわる予防コスト、品質検査や材料等の受け入れ時の検査などのゼロ欠陥とするための評価コスト、不良品を良品とするための追加加工や、不良品に含まれる材料を外販するために実施される解体業務等に要する外部失敗コスト、そして、不良品が社外に流出してからの対策(リコール、訴訟関連活動など)に費やされる外部失敗コストを区分して、正確に計算することを強くお奨めする。

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遠藤 功(えんどう いさお) [早稲田大学ビジネススクール教授 株式会社ローランド・ベルガー会長]

1956年生れ。79年早稲田大学商学部卒業、三菱電機入社、米国ボストンカレッジ経営学修士(MBA)。その後、米系戦略コンサルティング会社を経て、2008年から早稲田大学ビジネススクールのMBA/MOTプログラムディレクターとして、ビジネススクールの運営を統轄。また、欧州系最大の戦略コンサルティング・ファームであるローランド・ベルガーの日本法人会長として、経営コンサルティングにも従事。『MBAオペレーション戦略』『現場力を鍛える』『見える化』など著書多数。

加登 豊(かと ゆたか) [神戸大学大学院経営学研究科教授]

1953年生れ。78年3月神戸大学大学院経営学研究科博士課程前期課程修了、86年4月大阪府立大学経済学部助教授、94年1月神戸大学経営学部教授、99年4月神戸大学大学院経営学研究科教授、2008年4月~10年3月経営学研究科長・経営学部長。『インサイト管理会計』『インサイト原価計算』『ケースブック コストマネジメント』『管理会計入門』など著書多数。

成生達彦(なりう たつひこ) [京都大学大学院経営管理研究部教授]

1952年生まれ。78年横浜国立大学大学院経済学研究科修士課程卒業、81年京都大学大学院経済学研究科博士後期課程修学、89年米国ノ-スカロライナ州立大学大学院卒業(Ph.D.)、81年南山大学経営学部に就職、94年に教授、同年京都大学博士(経済学)、98年京都大学大学院経済学研究科教授、2006年京都大学大学院経営管理研究部教授、2008年~09年京都大学大学院経営管理研究部研究部長。主著に『ミクロ経済学入門』など。

河野 宏和(こうの ひろかず) [慶應義塾大学大学院学経営管理研究科委員長 慶応義塾大学ビジネス・スクール校長]

1980年慶應義塾大学工学部卒業、82年同大学院工学研究科修士課程、87年博士課程修了、同年慶應義塾大学大学院経営管理研究科助手、91年工学博士、91年助教授、98年教授となる。2009年10月より慶應義塾大学大学院経営管理研究科委員長、慶應義塾大学ビジネス・スクール校長を務める。1991年7月より1年間、ハーバード大学ビジネス・スクールヘ留学。IEレビュー誌編集委員長、TPM優秀賞審査委員、日本経営工学会理事。


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国内市場は成熟化する一方、グローバル化は急速に進展し、新興国の勃興も著しい。もはや、自ら新たな目標を設定し、ビジネスモデルを構築しなくてはいけない時代に突入。にもかかわらず、日本企業には閉塞感が漂う。この閉塞感を突破するにはどうしたらよいのか。著名ビジネススクールの校長・元校長で、経営学のリーダーたちが、リレー形式で、問題の所在を指摘し、変革のヒントを提起する。

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