8月31日、アジア開発銀行研究所(以下ADBI)が東京で「台頭するアジア中間層」というテーマでセミナーを行った。ADBの資料によれば、アジアにおける中間層は1990年の21%(約26.9億人中5.6億人)から、2006年には56%(約33.8億人中19億人)に急拡大、その購買力も7200億ドルから3.3兆ドルにまで伸びたという(*)。織り込まれているのは、企業はこのマーケットを攻略せよ、というメッセージだ。

(*)ADBは中間層を1人当たり1日の消費支出を2~20ドルと定義。ちなみに経済産業省では世帯可処分所得別に3万5000万ドル以上を富裕層、5000~3万5000ドル未満を中間層とし、アジアの中間層は8.8億人としている。

 しかし、アジアの中間層と言ってもその実像は各国バラバラだ。例えば「中国の中間所得者層」と言ったとき、それをどうイメージするだろうか。日本人はむしろ中間所得者層と聞いて、「年収800万円程度、持ち家ありの大手企業サラリーマン」という日本型の中産階級をイメージするかもしれない。

日本政府は年収6万元以上を
「中間所得者層」と認識

 わかりやすい例として、中国人観光客への個人ビザ解禁がある。昨夏、日本政府は個人ビザを解禁したが、対象となったのは年収25万元以上(約325万円、1元=約13円)の「富裕層」だった。さらに今年になって範囲を拡大して、年収6万元(78万円)と言われる「中間所得者層」までをビザ発給の対象に取り込んだ。

 上海では年収25万元の所得者は、一般的に中国民営企業での勤務であれば、総経理(日本で言う社長、会社の規模によりかなりピンキリ)を含む高級管理職に属するクラス。また年収6万元以上といえば、「小白領(プチホワイトカラー)」と呼ばれる入社後数年の20代後半の待遇、というのがざっくりとした位置づけである。

「年収25万元以上」にはさらに幅がある。「月収2万元超」という典型的な管理職も存在すれば、年収200万元、2000万元(約2億6000万円)という、社会の平均(東部沿海地区なら年収約2万元)の100倍、1000倍以上もの収入を持つ者(特に国有金融業界の高級管理職など)もいる。上海市の消費は、こうした「富裕層による牽引ではないか」というのが実感だ。