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日本を元気にする経営学教室

TOTO、ヤマトが示した
「ガラパゴス」こそ日本のチャンス
早稲田大学ビジネススクール教授 遠藤 功

遠藤 功 [早稲田大学ビジネススクール教授 株式会社ローランド・ベルガー会長],加登 豊 [神戸大学大学院経営学研究科教授],成生達彦 [京都大学大学院経営管理研究部教授],河野宏和 [慶應義塾大学大学院学経営管理研究科委員長 慶応義塾大学ビジネス・スクール校長]
【第14回】 2010年9月13日
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「ガラパゴス化」は
本当に悪いことなのか

 ここ数年、「ガラパゴス化する日本」という論調がよく聞かれる。外界から遮断され、独自の生態系を維持したがために、世界の進化からは取り残されてしまった孤島になぞらえて、日本製品の国際競争力のなさが揶揄されている。

 よく引き合いに出されるのは、携帯電話である。日本の携帯電話は世界でも類がないほどの高機能だが、世界の標準から見れば、きわめて特殊なカスタム品で、国際競争力に著しく欠ける。日本では売れても、世界ではさっぱり売れない典型的な「ガラパゴス製品」と言われている。

 他にも、液晶TV、DVDレコーダー、カーナビなど多くのエレクトロニクス製品が、「ガラパゴス化」していると言われる。確かに、現象面だけを見れば、高機能、高付加価値ではあるが、世界のスタンダードから取り残され、国際競争力に欠けている製品は数多く存在する。

 こうした中で、日本企業も「ガラパゴス」から脱し、新興国市場で受け入れられるような世界標準の、ローコストなコモディティ製品にシフトすべきであるという指摘をよく見かけるが、それはきわめて短絡的、かつ戦略性に欠ける議論だと言わざるをえない。

 卓越した技術力を基盤とした製品の高機能化、高付加価値化は日本の競争力の源泉であり、それを捨てるような処方箋はありえない。韓国企業や台湾企業の成長が著しいからといって、その後追いをすべきという発想自体が安易であり、ナンセンスである。

 そもそも経営とは「際立つ」ことである。競合企業が生み出しえないような独自の価値を究めることが経営の目的である。

 その意味では、「ガラパゴス化」という言葉が適切かどうかは別にして、独自の進化を遂げ、独自の価値を生み出している今の状況を、悲観的に見過ぎるのは好ましいことではない。

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遠藤 功(えんどう いさお) [早稲田大学ビジネススクール教授 株式会社ローランド・ベルガー会長]

1956年生れ。79年早稲田大学商学部卒業、三菱電機入社、米国ボストンカレッジ経営学修士(MBA)。その後、米系戦略コンサルティング会社を経て、2008年から早稲田大学ビジネススクールのMBA/MOTプログラムディレクターとして、ビジネススクールの運営を統轄。また、欧州系最大の戦略コンサルティング・ファームであるローランド・ベルガーの日本法人会長として、経営コンサルティングにも従事。『MBAオペレーション戦略』『現場力を鍛える』『見える化』など著書多数。

加登 豊(かと ゆたか) [神戸大学大学院経営学研究科教授]

1953年生れ。78年3月神戸大学大学院経営学研究科博士課程前期課程修了、86年4月大阪府立大学経済学部助教授、94年1月神戸大学経営学部教授、99年4月神戸大学大学院経営学研究科教授、2008年4月~10年3月経営学研究科長・経営学部長。『インサイト管理会計』『インサイト原価計算』『ケースブック コストマネジメント』『管理会計入門』など著書多数。

成生達彦(なりう たつひこ) [京都大学大学院経営管理研究部教授]

1952年生まれ。78年横浜国立大学大学院経済学研究科修士課程卒業、81年京都大学大学院経済学研究科博士後期課程修学、89年米国ノ-スカロライナ州立大学大学院卒業(Ph.D.)、81年南山大学経営学部に就職、94年に教授、同年京都大学博士(経済学)、98年京都大学大学院経済学研究科教授、2006年京都大学大学院経営管理研究部教授、2008年~09年京都大学大学院経営管理研究部研究部長。主著に『ミクロ経済学入門』など。

河野 宏和(こうの ひろかず) [慶應義塾大学大学院学経営管理研究科委員長 慶応義塾大学ビジネス・スクール校長]

1980年慶應義塾大学工学部卒業、82年同大学院工学研究科修士課程、87年博士課程修了、同年慶應義塾大学大学院経営管理研究科助手、91年工学博士、91年助教授、98年教授となる。2009年10月より慶應義塾大学大学院経営管理研究科委員長、慶應義塾大学ビジネス・スクール校長を務める。1991年7月より1年間、ハーバード大学ビジネス・スクールヘ留学。IEレビュー誌編集委員長、TPM優秀賞審査委員、日本経営工学会理事。


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国内市場は成熟化する一方、グローバル化は急速に進展し、新興国の勃興も著しい。もはや、自ら新たな目標を設定し、ビジネスモデルを構築しなくてはいけない時代に突入。にもかかわらず、日本企業には閉塞感が漂う。この閉塞感を突破するにはどうしたらよいのか。著名ビジネススクールの校長・元校長で、経営学のリーダーたちが、リレー形式で、問題の所在を指摘し、変革のヒントを提起する。

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