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中国の内憂外患に拍車をかける「南シナ海完敗」

真壁昭夫 [信州大学教授]
【第437回】 2016年7月19日
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中国の南シナ海領有権主張に対し
仲裁裁判所は「法的根拠なし」と否定

海洋進出には共産党の威信がかかっているだけに、当面、南シナ海での緊張が続くかもしれない

 7月12日、オランダ・ハーグの仲裁裁判所は、中国が南シナ海での領有を主張してきた地域を囲む境界線=九段線に対して、「歴史的な権利を主張する法的根拠はない」と結論した。これは、中国の“力の論理”に基づく海洋進出に対する明確な否定だ。

 それによって、海洋進出を国内体制の根固めに使ってきた共産党政権の面子がつぶれ、中国が国際社会で孤立する可能性も高まったといえる。中国の拡張主義は、そろそろ転換期に差し掛かったとみるべきだ。

 これまで、中国は南シナ海の9割程度の地域に主権を持つと主張し、スプラトリー諸島(南沙諸島)、パラセル諸島(西沙諸島)等で埋め立て、軍事施設の設営を進めてきた。そうした行動は、「過去2000年以上にわたり同海域で活動してきた歴史がある」との中国の身勝手な主張に基づいている。

 中国は他国の主権を無視し、南シナ海をわがもの顔で蹂躙しようとしたか。その理由は“中華思想”による、国内政治体制の確立だろう。中国は自らが世界の中心であることを目指し、アジア、そして世界への覇権と政権基盤の強化を目指してきた。いわば、漢民族の繁栄を目指す“中国夢=チャイナドリーム”の具現化である。

 しかし、今回の裁定は、国際司法による中国の論理の否定に他ならない。当然、国際社会は司法判断を尊重する。中国の経済力に陰りが見え始めた現在、関係各国は冷静に今後の動向や対中関係を見極めようとするだろう。

 長い目で見れば、中国の理不尽な海洋進出は修正を迫られるはずだ。問題は中国政府が国内世論をなだめつつ、国際社会からの批判や懸念にも応じなければならないことだ。

 これは簡単ではない。当面は、国内世論への配慮から中国は強硬姿勢を取るだろう。それに対して、日米を中心に国際社会は毅然とした態度で臨み、中国に外交政策の是正を求めていくべきだ。

中国が主張してきた“九段線”の不合理
当面、南シナ海での緊張状態は続く可能性

 これまで、中国は“九段線”を根拠に、南シナ海を領有することの正当性を主張してきた。九段線の歴史は1953年までさかのぼる。中国は9の本の破線で台湾、フィリピン、マレーシア、ベトナムが面する南シナ海を囲い、その全域が中国古来の領土だと勝手に定めた。

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真壁昭夫 [信州大学教授]

1953年神奈川県生まれ。一橋大学商学部卒業後、第一勧業銀行(現みずほ銀行)入行。ロンドン大学経営学部大学院卒業後、メリル・リンチ社ニューヨーク本社出向。みずほ総研主席研究員などを経て現職に。著書は「下流にならない生き方」「行動ファイナンスの実践」「はじめての金融工学」など多数。


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