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「引きこもり」するオトナたち

「引きこもり」脱出は不可能ではない!
社会とのつながりと自立を導く訪問治療の力

池上正樹 [ジャーナリスト]
【第39回】

 一口に「引きこもり」といっても、様々なタイプがいることは、これまでも述べてきた。その中でも、年々深刻化しているといわれているのが、自宅や自分の部屋などから、まったく出られないタイプだ。

 彼らの中には、何年か経てば、自分から「引きこもり」を抜け出す人もいるし、「不安障害」系の軽い精神疾患を患っているだけの人もいる。しかし、長年にわたって引きこもり続けるなどの重度の精神疾患が疑われるようなケースになると、家族から「どこに相談したらいいのか」「どうやって診療につなげたらいいのか」というような話をよく聞く。

 一般的に、本人が自ら医療機関に出向かなければ、状態を診療してもらうことはできない。行政機関や民間の支援団体に家族が相談しても、「対応できない」「年齢が対象外」といった理由からタライ回し状態にされることもある。こうして、本人も家族も長年、社会から置き去りにされたまま、高齢化だけが進んできた。

 そんな「引きこもり」の重い症状の人たちを対象に家庭訪問を行い、その結果、彼らの大半が地域で就労など社会的に自立した生活を送れるようになるほどの高い効果を上げているのが、静岡県浜松市にある「ぴあクリニック」(精神科)の新居昭紀院長を中心とするPSW(精神保健福祉士)と近接する「訪問看護ステーション不動平」(精神科専門)サポートチームだ。

退院しても社会は放ったらかしに…
置き去りにされた人を救う「訪問診療」

 「我々が扱うのは、医療が途切れて引きこもってしまった人や、気がついたら呼吸困難な重度の精神障害になっていた人たち。我々が往診専門という形で関わりを始めなければ、彼らは社会から置き去りにされてしまう。そんな埋もれた人たちがたくさんいると実感したのです」

 こう振り返る新居医師は元々、近くにある総合病院の院長だった。そもそも、病院を退職後は、悠々自適の生活を送ろうと思っていたのに、自分がかつて受け持っていて治療が少しもうまくいかず、医療が中断し、地域に埋没していた患者に何らかの訪問支援をしようと、看護師の妻と2人でボランティアを始めたことがきっかけだったという。

 「入院した精神障害者は、一旦、退院すると、本人がどんな状態になろうとも、家族に委ねられてしまう。病院からいわせれば、地域や福祉体制が面倒を見ればいいという発想だからです。しかし、彼らは自宅に帰されると、自閉、無為になり、布団を被って寝ているのが実態。重い人たちほど、退院後のサポートが大事なのに、何もされていないケースが多いのです」

 こうした彼らの存在を見過ごせなくなった新居医師らは、2004年4月に、「カンガルークラブ」という訪問型支援のボランティアグループを設立。当初は「面白くて、ハマっていた」活動が、次第に共感を呼び、対象者が40人近くまで増えてしまったという。

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池上正樹 [ジャーナリスト]

通信社などの勤務を経て、フリーのジャーナリストに。主に「心」や「街」を追いかける。1997年から日本の「ひきこもり」界隈を取材。東日本大震災直後、被災地に入り、ひきこもる人たちがどう行動したのかを調査。著書は『ひきこもる女性たち』(ベスト新書)、『大人のひきこもり』(講談社現代新書)、『下流中年』(SB新書/共著)、『ダメダメな人生を変えたいM君と生活保護』(ポプラ新書)、『あのとき、大川小学校で何が起きたのか』(青志社)など多数。TVやラジオにも多数出演。厚労省の全国KHJ家族会事業委員、東京都町田市「ひきこもり」ネットワーク専門部会委員なども務める。YAHOO!ニュース個人オーサー『僕の細道』

 


「引きこもり」するオトナたち

「会社に行けない」「働けない」――家に引きこもる大人たちが増加し続けている。彼らはなぜ「引きこもり」するようになってしまったのか。理由とそうさせた社会的背景、そして苦悩を追う。

「「引きこもり」するオトナたち」

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