高齢化社会の大問題

鈴木敏文氏、鳥越俊太郎氏らに見る「高齢」と仕事の理想的な関係高齢期を迎えるに当たり、「仕事」と「資産運用」について何に気をつけるべきか、考えておく必要がある

 日本は、国民が長寿であると共に出生率が低く、急速に高齢化が進んでいる。政府は、労働力人口の減少の影響を緩和するために、女性と共に高齢者の労働参加に期待しているが、今年に入ってから、高齢者と仕事の関係について考えさせられる印象的な事例がいくつか発生した。

 本稿では、筆者の印象にある4つの事例に関して考えてみると共に、我々が高齢期を迎えるに当たって、何に気をつけたらいいかについて、教訓を引き出してみたい。

【事例1】鈴木敏文氏(83歳)、経営の第一線より引退

 流通の「カリスマ」こと、鈴木敏文氏の、セブン&アイ・ホールディングス会長辞任のニュースには、正直なところ驚いた。

 圧倒的な実績と共に築いた地位と影響力を、経営陣に関する人事案が社内から反対されたことから(ご本人の説明は、「否決」ではなく「社内から反対があった」ことが辞任の原因であった)、一瞬のうちに自ら手放した。

 報道の一部には、独断先行的な経営をいわゆる「老害」として伝える記事があったが、傍目には、辞任の直前まで現役の最前線で仕事をされておられたし、力量的に彼を上回る経営者に取って代わられたわけではなかった。

 彼が後継者を育てて来なかったことが問題だったとの後日評価は議論として可能だが、彼から見てそれにふさわしい人材がいなかったのかもしれないし、真に有望な人材なら、勝手に育って彼に取って代わるべきだったということなのかもしれない。

 業界のイノベーターたり得るような天才経営者に、同時に優秀な経営教育者であることを求めるのは、公平に言って無い物ねだりだろう。

「余人を以て代え難い」との自覚がある天才は、体力の限界あるいは、自らの存在ないし方法が淘汰されるまで、その職にあり続けるというのは、合理的な方法だろう。周囲にとっては大変かもしれないが、文句があれば、彼(彼女)を、実力を以て淘汰するしかない。