ダイヤモンド社のビジネス情報サイト
「引きこもり」するオトナたち

ポケモンGOで「日本の引きこもりが外に出る」は本当か

池上正樹 [ジャーナリスト]
【第264回】 2016年7月28日
著者・コラム紹介バックナンバー
1
nextpage
本当に引きこもり当事者はポケモンGOをやっているのだろうか

 「海外では、精神科医が対処できなかった“引きこもり”が全部外に出るようになった」

 そんな麻生太郎財務大臣の発言で話題になっているのが、22日に日本での配信が始まったスマートフォン向けゲーム「ポケモンGO」。麻生大臣は、「G20」財務相・中央銀行総裁会議を前に「精神科医より漫画のほうが、よほど効果が出るのがいちばん大きいんじゃないか」とも語ったと報じられている。

 実際、先行配信されたアメリカでは、自閉症の子どもが「ポケモンGO」を始めた途端、外に飛び出し、知らない相手と情報交換やハイタッチまで交わすなどの嬉しい変化が現れたことを受け、「息子にとっては殻を破るきっかけとなった」という記事も紹介されている。

 「ポケモンGO」を始めると、外に出るというのは本当なのか。

引きこもり当事者が
ポケモンGOをやらない理由

 筆者は、報道されている変化などの効果のほどを検証しようと思い、ふだんネットを使っている周囲の20人近くの当事者たちに聞いてみた。

 すると、意外というべきなのか、やはりというべきなのか、メディアでの盛り上がりぶりとは裏腹に、「ポケモンGO」をしている当事者は、比較的元気な人たちも含め、筆者が聞いた範囲では誰もいなかった。

 その理由を聞くと、最も多かったのが、「アプリをダウンロードできない」端末しか持っていないというものだ。

 「ポケモンGOはやりたいのですが、端末が対応していないため、今は断念しています」

 「この携帯はアプリをダウンロードできませんし、ああいうゲームには興味がなくて。今日も、街中でポケモンGOをしている人を見て、違和感を覚えていました」

 「生憎、自分のスマホはメモリが足りなすぎて、1ギガしかないので、ポケモンGOが作動しないんです」

 ふだん引きこもる生活を強いられている当事者たちは、必要最低限な情報を収集する手段として端末を選んでいることが多く、通信費を節約する傾向にある。物理的にダウンロードできないというのも、もっともな話である。

 こうした理由から、スマホは持っていても「モバイル通信契約をしていないから」という人もいる。

1
nextpage
関連記事
スペシャル・インフォメーションPR
クチコミ・コメント

経営戦略最新記事» トップページを見る

最新ビジネスニュース

Reuters

注目のトピックスPR

話題の記事

池上正樹 [ジャーナリスト]

通信社などの勤務を経て、フリーのジャーナリストに。主に「心」や「街」を追いかける。1997年から日本の「ひきこもり」界隈を取材。東日本大震災直後、被災地に入り、ひきこもる人たちがどう行動したのかを調査。著書は『ひきこもる女性たち』(ベスト新書)、『大人のひきこもり』(講談社現代新書)、『下流中年』(SB新書/共著)、『ダメダメな人生を変えたいM君と生活保護』(ポプラ新書)、『あのとき、大川小学校で何が起きたのか』(青志社)など多数。TVやラジオにも多数出演。厚労省の全国KHJ家族会事業委員、東京都町田市「ひきこもり」ネットワーク専門部会委員なども務める。YAHOO!ニュース個人オーサー『僕の細道』

 


「引きこもり」するオトナたち

「会社に行けない」「働けない」――家に引きこもる大人たちが増加し続けている。彼らはなぜ「引きこもり」するようになってしまったのか。理由とそうさせた社会的背景、そして苦悩を追う。

「「引きこもり」するオトナたち」

⇒バックナンバー一覧