「海外では、精神科医が対処できなかった“引きこもり”が全部外に出るようになった」
そんな麻生太郎財務大臣の発言で話題になっているのが、22日に日本での配信が始まったスマートフォン向けゲーム「ポケモンGO」。麻生大臣は、「G20」財務相・中央銀行総裁会議を前に「精神科医より漫画のほうが、よほど効果が出るのがいちばん大きいんじゃないか」とも語ったと報じられている。
実際、先行配信されたアメリカでは、自閉症の子どもが「ポケモンGO」を始めた途端、外に飛び出し、知らない相手と情報交換やハイタッチまで交わすなどの嬉しい変化が現れたことを受け、「息子にとっては殻を破るきっかけとなった」という記事も紹介されている。
「ポケモンGO」を始めると、外に出るというのは本当なのか。
引きこもり当事者が
ポケモンGOをやらない理由
筆者は、報道されている変化などの効果のほどを検証しようと思い、ふだんネットを使っている周囲の20人近くの当事者たちに聞いてみた。
すると、意外というべきなのか、やはりというべきなのか、メディアでの盛り上がりぶりとは裏腹に、「ポケモンGO」をしている当事者は、比較的元気な人たちも含め、筆者が聞いた範囲では誰もいなかった。
その理由を聞くと、最も多かったのが、「アプリをダウンロードできない」端末しか持っていないというものだ。
「ポケモンGOはやりたいのですが、端末が対応していないため、今は断念しています」
「この携帯はアプリをダウンロードできませんし、ああいうゲームには興味がなくて。今日も、街中でポケモンGOをしている人を見て、違和感を覚えていました」
「生憎、自分のスマホはメモリが足りなすぎて、1ギガしかないので、ポケモンGOが作動しないんです」
ふだん引きこもる生活を強いられている当事者たちは、必要最低限な情報を収集する手段として端末を選んでいることが多く、通信費を節約する傾向にある。物理的にダウンロードできないというのも、もっともな話である。
こうした理由から、スマホは持っていても「モバイル通信契約をしていないから」という人もいる。