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日本を元気にする経営学教室

アウトソースは本当に得なのか
小さな誤りが企業の存続を脅かす
慶應義塾大学ビジネス・スクール校長 河野 宏和

遠藤 功 [早稲田大学ビジネススクール教授 株式会社ローランド・ベルガー会長],加登 豊 [神戸大学大学院経営学研究科教授],成生達彦 [京都大学大学院経営管理研究部教授],河野宏和 [慶應義塾大学大学院学経営管理研究科委員長 慶応義塾大学ビジネス・スクール校長]
【第20回】 2010年10月25日
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 経済情勢の変化に合わせる形で、景気が拡大すると、生産能力の不足を補うために、生産機能の一部を外部の企業に委託するアウトソース(外製)が盛んに行われる。一方で景気が低迷して受注が少なくなると、一般には内製化に向けた動きが加速するが、アウトソースの方が新たな固定費負担を回避できるという理由で、近年ではアウトソースが実施されることも珍しくない。工場で働く人員を外部委託化することも、広い意味でのアウトソースに該当する。ところで、アウトソースするとコストダウンできるというのは果たして本当なのだろうか?

アウトソースの落とし穴
安く見える製造原価

 ある大手の精密機器メーカーでは、製品自体が高価であることや高精度化に伴う技術競争の激化から、受注が安定せず、生産量の変動に悩んでいた。そんな折、今から10年近く前になるが、ある生産担当役員が、複数のうちのある一つの基幹ユニットの内製原価が割高であると考え、外部の専門メーカーからも原価見積もりをとって比較するよう指示した。

 高度な精密機器であることから、加工できるメーカーは限られていたが、技術力に優れたいくつかの国内メーカーに見積もりを依頼した。大手メーカーから注文を受けるチャンスと考えたこれらのメーカーは、できるだけ価格を安く抑えた見積もりを提出した。

 それを見た役員は、社内で作るより随分と外注の方が安いことに自信を得て、そのユニットの生産を外部メーカーに委託した。意を強くしたその役員は、他のユニットについても次々に外部委託化を進めた。製造原価の比較表を吟味していた経理部門も、当然のごとく外製化をサポートした。

 この精密機器メーカーの主力製品は、外製化により大きなコストダウンに成功した。同時に、社内での仕事は、外製先から納入されたユニットの組み立てと最終検査だけとなり、多くのスペースを占めていた仕掛在庫は一掃され、フロアスペースにも余裕が生まれた。

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遠藤 功(えんどう いさお) [早稲田大学ビジネススクール教授 株式会社ローランド・ベルガー会長]

1956年生れ。79年早稲田大学商学部卒業、三菱電機入社、米国ボストンカレッジ経営学修士(MBA)。その後、米系戦略コンサルティング会社を経て、2008年から早稲田大学ビジネススクールのMBA/MOTプログラムディレクターとして、ビジネススクールの運営を統轄。また、欧州系最大の戦略コンサルティング・ファームであるローランド・ベルガーの日本法人会長として、経営コンサルティングにも従事。『MBAオペレーション戦略』『現場力を鍛える』『見える化』など著書多数。

加登 豊(かと ゆたか) [神戸大学大学院経営学研究科教授]

1953年生れ。78年3月神戸大学大学院経営学研究科博士課程前期課程修了、86年4月大阪府立大学経済学部助教授、94年1月神戸大学経営学部教授、99年4月神戸大学大学院経営学研究科教授、2008年4月~10年3月経営学研究科長・経営学部長。『インサイト管理会計』『インサイト原価計算』『ケースブック コストマネジメント』『管理会計入門』など著書多数。

成生達彦(なりう たつひこ) [京都大学大学院経営管理研究部教授]

1952年生まれ。78年横浜国立大学大学院経済学研究科修士課程卒業、81年京都大学大学院経済学研究科博士後期課程修学、89年米国ノ-スカロライナ州立大学大学院卒業(Ph.D.)、81年南山大学経営学部に就職、94年に教授、同年京都大学博士(経済学)、98年京都大学大学院経済学研究科教授、2006年京都大学大学院経営管理研究部教授、2008年~09年京都大学大学院経営管理研究部研究部長。主著に『ミクロ経済学入門』など。

河野 宏和(こうの ひろかず) [慶應義塾大学大学院学経営管理研究科委員長 慶応義塾大学ビジネス・スクール校長]

1980年慶應義塾大学工学部卒業、82年同大学院工学研究科修士課程、87年博士課程修了、同年慶應義塾大学大学院経営管理研究科助手、91年工学博士、91年助教授、98年教授となる。2009年10月より慶應義塾大学大学院経営管理研究科委員長、慶應義塾大学ビジネス・スクール校長を務める。1991年7月より1年間、ハーバード大学ビジネス・スクールヘ留学。IEレビュー誌編集委員長、TPM優秀賞審査委員、日本経営工学会理事。


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国内市場は成熟化する一方、グローバル化は急速に進展し、新興国の勃興も著しい。もはや、自ら新たな目標を設定し、ビジネスモデルを構築しなくてはいけない時代に突入。にもかかわらず、日本企業には閉塞感が漂う。この閉塞感を突破するにはどうしたらよいのか。著名ビジネススクールの校長・元校長で、経営学のリーダーたちが、リレー形式で、問題の所在を指摘し、変革のヒントを提起する。

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