前回の第4回では、シンプルなテクノロジーが、途上国の貧困層の人々の生活に様々なインパクトをもたらしていることを紹介した。そこで今回は、こうした「真のイノベーション」を生み出し、われわれの未来を変えていく担い手はいったい誰なのかについて考えてみたい。それは企業なのか、政府なのか、NPOなのか、それともその他の機関なのか――。

企業とNPOが
コラボレーションする時代

「ハイブリッド・バリュー・チェーン」という言葉を聞いたことがあるだろうか。舌をかみそうな言葉だが、これは世界規模でソーシャル・アントレプレナー(社会起業家)を育成・支援するNGO『アショカ』が提唱する、企業とNPOとのコラボレーションによる新たなビジネスモデルのこと。途上国の問題解決のひとつのアプローチとしてこのモデルが使われている。

 アショカの創設者ビル・ドレイトンは2010年9月、“ハイブリッド・バリュー・チェーン”について、米国Harvard Business Reviewに書いた論文「A New Alliance for Social Change」でインドとコロンビアの企業の例を挙げ、「貧困層向けの住宅建設ビジネスは、現地の市民団体とのパートナーシップがあったからこそ成立した」と述べている。

 市民団体やNPOの強みは現地に暮らす人たちとのつながりの強さと信頼で、企業の強みは高い専門性と財力だ。この組み合わせによりはじめて、困難な途上国の社会問題が解決できることになる。そして、このようなNPOと企業との連携が可能になったのは、NPOがより成熟し、より革新的、そしてより生産性が上がったここ最近である、とドレイトンは分析している。つまり、NPOと企業が手をつなぐ可能性は近年非常に高まっているということだ。

 コペルニクにおいても、途上国の市民団体・NPOとパートナーシップを結ぶことにより、主にベンチャー企業が開発した途上国向けのテクノロジーを、貧困層が暮らすラストマイルに普及させることを可能にしている。

現地女性のネットワークで、
企業のテクノロジーを普及させる

 インドネシアでのパートナーのひとつ『PeKKA』は女性家長が相互支援をすることを目的に作られたNPOで、インドネシアの20州で600の女性グループを組織している。このNPOは、現地の住人に認知、信頼されており、こうした現地に根ざした活動をしている団体がいるからこそ、そのエリアでのテクノロジー普及が可能になっている。