安倍マジックの「タネ明かし」
「期待」は市場にどう効くのか
『週刊ダイヤモンド』4月6日号は、「安倍マジックのタネ明かし」の大特集を組んでいる。今やほとんど一般名詞のように使われる「アベノミクス」の仕組みの解説に、賛否両論、さらにデータを網羅している大特集なので、経済に関心のある読者は、ぜひ一冊手元に置いておかれることをお勧めする。
しかし、タイトルに「マジック」とあることからもわかるが、アベノミクスの仕組みは、一般にもうひとつよく理解されていないように思う。
最大のポイントは、アベノミクスの金融緩和政策で、どうして、円安・株高が起こるのか、という部分だろう。
特集号の35ページには、市場参加者がインフレ期待を持てば、日米の物価差の縮小が起こり、これを(投機勢)が評価して、円安になる、といった説明が載っている。
しかし、特集内の記事ではないが、22ページの野地慎氏のコラムに載っている日本国債のフォワードレートを見ると(4年後の1年物レートが0.2%程度である)、債券市場は近い将来インフレが起こると予想していないような金利形成になっている。
前記の説明では、「インフレ期待が大事だというが、インフレにする方法がないのに、どうしてインフレ期待を持つことができるのか?」「現にインフレ期待が起きていないではないか」といった批判に対して反論しにくい。
マジックのタネは、将来のインフレ率そのものではなく、将来の実質金利の期待値の変化にある。