安倍晋三政権は、集団的自衛権行使のための憲法解釈変更に突き進み始めている。集団的自衛権とは、「他の国家が武力攻撃を受けた場合に、直接に攻撃を受けていない第三国が協力して共同で防衛を行う国際法上の権利」である。要するに、直接に攻撃を受けている他国を援助し、これと共同で武力攻撃に対処することであり、憲法解釈上、日本はこの権利を「持っているが、行使できない」との立場をとってきた。

 自民党内には当初、谷垣禎一法相が「特に憲法解釈は国民の理解を取り付ける必要がある。手順段取りを踏むことが大事だ」と発言するなど、憲法解釈に対するさまざまな慎重論、反対論が存在した。しかし、首相が国会答弁で「憲法解釈の最高責任者は私だ」と言い、集団的自衛権行使容認へ強い姿勢を示したことで、党内の異論は静まった。首相は、石破茂自民党幹事長をトップに総裁直属機関「安全保障法制整備推進本部」を設置し、集団的自衛権行使容認へ意見集約を加速しようとしている。

「やりたい政策」実現へ、
意欲を隠さなくなった安倍首相

 昨秋の臨時国会で、安倍政権は乱暴な国会運営の末に「国家安全保障会議(日本版NSC)」を設置し、「特定秘密保護法」を成立させた(第72回を参照のこと)。通常国会でも、首相の「やりたい政策」に積極的な姿勢を見せている。

 安倍首相は、一時トーンダウンしていた「憲法96条」の改正(第66回を参照のこと)についても、衆院予算委員会で「たった3分の1の国会議員が反対することで、国民投票で議論する機会を奪っている。世論調査で十分な賛成を得ていないが、国民的支持を得る努力をして、必要性を訴えていきたい」と答弁した。首相は憲法改正そのものについても「私のライフワークだ。何のために政治家になったのか。何としてもやり遂げたい」と述べ、強い意欲を全く隠さなくなった。

 また、安倍政権は「武器輸出三原則」に代わり、武器輸出の基準を大きく緩和する「防衛装備移転三原則」を閣議決定した。そして、安倍首相は早速新しい原則を適用し、来日したトニー・アボット豪首相と、防衛装備の共同研究・開発などの協議を進めることを確認した。