一見、フェアな印象のある外資系企業だが……
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 今回は、都内にある外資系のファイナンス系の会社(正社員150人ほど)で起きたパワハラを題材に、会社のホンネとタテマエを考えたい。

 外資系企業と言えば、「実力主義」「役割分担や権限と責任の所在などが明確」といったイメージがある。これらがタテマエとして、日本の社会に広く浸透している。しかし実際のところは、そうとは言えない場合が少なくない。

 そこで数ヵ月前に、この外資系のファイナンス系の会社をパワハラで辞めた男性(A氏とする。年齢は50歳。在籍中はIT担当部長)に、数時間に及ぶロングインタビューを試みた。A氏はこの会社で、日本人とアメリカ人の2人の執行役員の縄張り争いに巻き込まれ、心を病んだという。あなたの職場にも、このような「闇」がないだろうか。


うつになって、もう限界だった――。
「俳優崩れ」の役員が全力で潰しにくる

執行役員の執拗な攻撃でうつになり、会社を辞めた元IT担当部長・A氏。 「外資系パワハラ」の内情を語る

A氏 今年の2月に辞めたんですね。もう、限界だったから……。辞める数ヵ月前に診療内科で、うつ病の初期症状と診断されました。診断書をメールに添付して、直属上司であるアメリカ人(55歳)に送り、「辞めさせてもらいます」ってね。

 中途採用を経て45歳で入社し、始めの数年間はともかく、辞めるまでに1年半近くにわたり、「俳優崩れ」の日本人執行役員に徹底して潰された……。私のことを追い出してやろう、と全力でしたよ。すごいものを見ちゃったな、という感じで……(苦笑)。

筆者 「俳優崩れ」?

A氏 彼は、あの会社の管理部門の執行役員で、40代後半かな……。二十数年前、私立の難易度の高い大学の文学部を卒業し、名門の劇団に入ったみたい。だけど、鳴かず飛ばず。いじめられたみたいね。それで30代半ばになり、県会議員をする父親のコネであるファイナンス系の会社に入る。そこで上司から「中年になって、こんなこともできないのか?」とバカにされ続け、辞めたみたい。

 そのときまた父のコネを使い、あの会社に入った。もう、40歳。そんな劣等感もあったんだろうね。猛烈に社長にゴマをすったりして、5年くらいで執行役員になった。なぜか、課長からいきなり役員に。部長を経験していない。