朝令暮改の経団連の見直し
ルール変更で良くなったことは皆無

就活問題をこじらせた経団連「指針」の本質的欠陥今年の方針変更による“就活時期後ろ倒し”には、企業からも学生からも不満の声が上がっている

 経団連の榊原会長は、大学生の採用活動の面接解禁時期を8月に後ろ倒しした指針について、活動が長期化したなどの問題点も指摘されていることから、「実態を調査したうえで改善を求める意見が多ければ、来年見直すこともありうる」と述べた。問題があれば見直すというのは、当たり前の話だ。

 しかし、同時に「すでに来年に向けた準備もあるので指針を大幅に変えることは難しいが、問題点が指摘されれば来年といえども何らかの改善はできるのではないか」と指針を大幅に変えない意向を示しており、しかも、「内定が解禁される10月以降の早い時期に実態を調査して対応を考えたい」と来年の準備への影響に言及しながら、対応を考えるのは10月以降になると述べている(それにしても、このやる気のなさは何なのだろうか?)。

 批判を受けたことは認識しているが、大きくは変えたくないし、そもそも現時点で何をどう変えたらいいのかが分からない、という本件に関する経団連の当事者能力のなさがよく伝わって来る大変残念な会見だ。

 社員の採用は企業経営の根幹に関わる重大事だ。榊原氏も経営者であるから、本件について何らかの定見を持っていて然るべきだ。余計なおせっかいだが、彼の出身企業の経営は大丈夫なのかと心配になる。

 筆者は、大学で授業を持っている関係上、就職活動に関わる学生の動きを近くで見ていたが、今年は、就職活動期間がいかにも長く、就職活動を理由とする授業の欠席者が多かった。また、ルールが変わり、それが守られる程度が企業によって異なり、どのように就職活動をしたらいいのか当惑している学生もいた。

 ルールが変わったことで良くなったことは一つもないし、ルールが変わったこと自体も悪影響を及ぼした、というのが率直な実感だ。