妻の“なんとなく”には根拠があった

 三谷伸久さん(仮名、会社員、42歳)は、マイホーム取得を機に、妻の理枝さん(同、専業主婦、40歳)の第六感を尊重するようになった。

 三谷さんは2年前、72平方メートル3LDKの中古マンションを購入。オフィスまで乗り換えなしだが、最寄り駅からは徒歩12分とやや遠い。しかし、総戸数32戸と少ないこともあって住民同士が顔見知りで仲もいい。内気な理枝さんにもすぐに友だちができた。伸久さん自身も、今では終の住処にしてもいいなと思うくらい気に入っている。

 「でもね、ここに決めるまでには一悶着あったんですよ」と伸久さん。当時、候補物件がもうひとつあって、伸久さんはそちらの物件を購入するつもりだった。しかし、理枝さんは「なんとなく嫌だわ」と言って譲らない。その物件は最寄り駅から徒歩5分。築年数も専有面積もほぼ同じで、価格もほとんど変わらなかった。

 「どうして嫌なのか、理由を言えよ。資産価値はこっちのほうが上だし、買い替えるときも徒歩5分のほうが有利じゃないか。それに相手が売り急いでいるみたいだから、この値段で買えるんだぜ。僕は凄くラッキーだと思うけどなあ」

 「あなたの言っていることはよくわかるけど、私、なんとなく嫌なの。見に行ったときも、エントランスで何人かひそひそ話をしていたじゃない? やたらあちこちに張り紙がしてあって、ギスギスした雰囲気を感じるの。どうして相手がこんなに売り急いでいるのかも気になるわ」

そのマンションは
ワンマン理事長が牛耳っていた!

 伸久さんは念のため管理会社に問い合わせたが、管理費の滞納もなく、特に問題はないような口ぶりだった。しかし、結局、「いつも家にいるのは私なんだから、私に決めさせて」という理枝さんの一言に負け、しぶしぶ現在のマンションに決めたという経緯がある。

 「ところが、後からそのマンションには近所でも評判のワンマン理事長がいて、管理組合を牛耳っていることを知りました。管理組合の理事長は1年とか2年ごとの持ち回りが普通なのに、もう8年もやっているそうです。もともとは地主で、あのマンションも等価交換で建てたものだそうですから、未だに自分のものという意識が強く、なんでも思いどおりにならないと気がすまないらしいです」。

 理事長を変える動きもあったそうだが、それをきっかけにマンション内に理事長派と反理事長派という派閥ができ、かえって対立が深まってしまったのだという。

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