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家を買う!妻とのケンカを乗りこえて

男は「将来と過去」、けれど女は「今」が大事

太田三津子 [不動産ジャーナリスト]
【第9回】 2010年6月10日
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売れば利益が出る…しかし、妻は猛反対

 伏見裕二さん(仮名、43歳、新聞社勤務)は、20代から株やファンドなどの金融商品や投資用マンションなどへの投資を始め、バブル崩壊やリーマンショックのときも巧く売り抜けて儲けを出してきた実積がある。

 その極意は実にシンプル。「相場が下がり切ったときに買い、昇り調子の間にさっさと売る。売りで欲張りすぎないこと」。

 そんな伏見さんだから、マイホーム選びも他の投資商品と同様に考えた。

 「高く貸すことができる物件か。売却するとき、キャピタルゲインが見込めるか」というモノサシで物件を精査したのである。

2001年に、これまでの投資の儲けで東京臨海部の超高層マンションを現金買い。「臨海部のタワーマンションは必ず値上がりする」という読みは当たり、5年後の2006年秋には購入価格を1500万円以上も上回る価格で売却できる状況になった。

 入居当初は寂しかった周辺環境も整備されて魅力的な店舗も増えたうえに、景気回復の波に乗ってタワーマンションが林立し、臨海エリアの人気が高まったからだ。

 「今が売りどき」と思った伏見さんは、このマンンションを売って利益を確定し、しばらく小ぶりな賃貸マンションに移って次の投資機会を待とうと考えた。

 しかし、妻の慶子さん(仮名、専業主婦、38歳)は大反対。

 「やっと近くに商業施設もできて暮らしやすくなったし、子どもたちも新しい学校ができて喜んでいるのに、この家を売って賃貸暮らしに戻るなんてとんでもないわ!」

 あまりの剣幕にタジタジとなった伏見さんは、結局、自宅の売却をしぶしぶ断念した。

 その1年後、リーマンショックで中古マンション価格も大幅ダウン。
「あのとき売っていれば……」とホゾを噛む伏見さんと、「家まで投資商品と考えるなんて」とあきれかえる慶子さんの間には深い溝が生まれてしまった。

家族の「時間」は買い戻せない

 バブル崩壊以降、日本の不動産も欧米のように個別の不動産が生み出す収益力によって価値が決まるようになった。オフィスビルや賃貸マンションなどの収益不動産は、原則としてこうした考えにもとづく収益還元価格で取引されている。

 しかし、収益を生み出さないマイホームについては、こうした考え方は馴染まないとされていた。多くの人にとってマイホームを持つ目的は収益ではなく、暮らしの安定や家族の幸せであったし、欧米に比べ永住志向も強かったからだ。ところが、伏見さんのように自宅の価値も収益還元法になぞらえて精査し、財産を増やすために活用しようという人々が登場した。

 伏見家の騒動は世の中の変化を象徴するものと言えよう。

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太田三津子 [不動産ジャーナリスト]

1978年青山学院大学卒。「住宅画報」編集、「住宅新報」記者を経て1995年フリーライターとして独立、専門誌や経済誌を中心に住宅・不動産関係の記事を執筆するかたわら、雑誌や書籍の企画編集、座談会の司会やコーディネーターとしても活躍。共著に『次世代ビルの条件』(鹿島出版会)。日本不動産ジャーナリスト会議会員。


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マイホームを賢く購入するためのマニュアル本はたくさんあるが、現実はなかなかうまくいかない。マイホーム取得には夫婦の合意が不可欠だからだ。家探しから契約、入居、買い替えの過程で、多くの夫婦が一発即発の危機を体験している。「女房は一体なにを考えているのか」とぼやく男性のために、実例を交えながら夫婦の危機回避の心得を紹介しよう。

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