『トヨタの自工程完結』の考え方でオフィスの仕事を変えていくと、どんなメリットが得られるのか。今回は、私たちの考える4~5番目をご紹介します。

[メリット1] 部分最適がなくなる
[メリット2] 上司が進捗確認できるタイミングを作れる
[メリット3] 上下左右のコミュニケーションが深まる
[メリット4] 各部署の固有の強みを最大限に活かせる
[メリット5] 部門内の情報共有が進む
[メリット6] 会議が減る
[メリット7] 理不尽なところが見える
[メリット8] 失敗が減り、妥協がなくなる
[メリット9] 生産性が上がる
[メリット10] モチベーションが上がる

[メリット4] 各部署の固有の強みを最大限に活かせる

 それぞれの部署には、そこだけが持っている「固有技術」とも言える独特の強みのようなものがある、と私は思っています。ところが、その固有の強みが本当に、適正に活かされているか。

 例えば、ある製品市場に関する知識がずば抜けて豊富な人材がいるのに、出てきたアウトプットとしての売上向上のプランは、焦点が定まらずいまひとつ、というようなケースはままあります。また、設計のベテランがたくさんいる部署がこんなに時間をかけたのに、この程度のものしか出てこないのか、というケースもあります。

 問題は、「プロセス/手順」にあるのだと思います。固有の強みが活かせるようなプロセスになっていないのです。

 新しい仕事の考え方を使うと、これが変わる。しっかりと仕事の「プロセス/手順」を洗い出していけば、固有の強みを適正に活かせていないことに気づくからです。

 気づいたら、「プロセス/手順」をゼロベースで見直して、新たに組み直せばいいのです。そこで固有の強みを活かす方法が見つけられる。結果として、固有の強みを最大限に活かせる組織になります。

[メリット5] 部門内の情報共有が進む

 部門間の情報共有に問題があると思っていましたが、とりわけオフィスでは、部門内の情報共有にも大きな問題があると思いました。

 仕事を属人的にしてしまっているケースが多々あったのです。この人がやればうまくいく、という仕事がたくさんあった。しかし、新しい人が来ると手間暇ばかりかかって、どうにもならない。

 結局、先輩の背中を見て仕事を覚えろ、といったことになります。昔は時間がありましたから、それでもよかったのかもしれませんが、今そんな悠長なことを言っていたら、あっという間にマーケットに置いていかれます。スピード感でまったく追いつかなくなる危険性があるのです。

 うがった見方をすると、ほかの人にはできないようにしているのではないか、とすら思ってしまったこともあります。余人に代えられない、自分にしかできない。そんなふうにして、自己の存在価値をアピールしているのではないか、と。

ムダな会議は、必ず減らせる!<br />

 しかし、それでは生産性を上げるという意味から言えば困るのです。異動や退職だけが問題なのではありません。風邪で休んだらどうするのか。産休など、長期で休みを取ったときにはどうするのか。そういうときに、周囲は困ってしまうのです。

 そして、属人的になっていたら、実は、カイゼンが進みません。ほかの人の知見が得られず、こうしたほうがいい、というコミュニケーションが深まらないからです。

 新しい仕事の進め方を使えば、こうはなりません。文書でマニュアルに落とし込み、結果の「振り返り」をしてアップデートしていくのです。こうすることで、誰にでもできるようになる。知見が集まることになる。仕事のレベルも上がる。

 これまで手取り足取り教えなければいけなかったものがなくなり、生産性が上がります。新しく入った人でもマニュアルから学べるので、周囲に迷惑をかけることもない。だからモチベーションアップにもつながるのです。

[メリット6] 会議が減る

 オフィスでは特にそうだと思いますが、最も生産性を下げているのは、もしかしたらこれかもしれません。会議です。

 会議という名前を付ければ、仕事をやっているような気になりますが、本当にこれは必要なのかと思える会議が、たくさんありました。実際に聞いてみると、「調整のために必要だ」と言う。

 こうした会議は、それこそ「自工程完結」の考え方を用いることで一気になくなります。なぜなら、部門内でも部門間でも情報共有が進むからです。「プロセス/手順」が部門間で共有されていれば、それこそ調整会議などいらない。ましてや対策会議なんて、問題が起きる前からやるのはおかしい。そこで、調整会議ゼロ、対策会議ゼロを宣言しました。

 実際にはゼロは難しいと思います。しかし、「自工程完結」の考え方を用いれば、極限まで減らしていくことができます。

 それこそ何かのプロジェクトを部門横断でやるときは、最も大きな課題になるのは、スケジュールをどうするかということと、「判断基準」「必要なもの」をしっかり共有することです。この二つさえしっかりできていれば、何度も何度も定期的に会議などする必要はないのです。

 もとより会議は、出席者の生産性を下げるだけではありません。会議のための資料を作ったり、議事録を書いたり、周辺業務としても多くの仕事を発生させるのです。会議があるから残業もあるケースも多い。会議が減れば、残業も減るのです。なのに「とりあえず会議」がいかに多いか。

「自工程完結」の考え方を使えば、会議は間違いなく減ります。必要最小限になるのです。

(次回は、5月25日公開予定です)