人間は、脳あってこその存在。人の行動、思考、感情、性格にみられる違いの数々は、すべて脳が決めているのです。「心の個性」それはすなわち「脳の個性」。私たちが日常で何気なく行なっていることはもちろん、「なぜだろう?」と思っている行動の中にも「脳」が大きく絡んでいることがあります。「脳」を知ることは、あなたの中にある「なぜ?」を知ることにもなるのです。この連載では、脳のトリビアともいえる意外な脳の姿を紹介していきます。
「一息入れる」コーヒータイムは
本当に効果アリ?
仕事が切迫し、長時間、仕事に没頭していると、誰しも能率が低下していきます。そんなとき、ビジネスマンの多くはコーヒーを飲んで一息入れるでしょう。確かに疲れていた気分を変えてくれるし、頭の中がスッキリしたような気にもなります。
ですが、コーヒーに本当にそんな効果が隠されているのでしょうか。それとも、本人の錯覚にすぎないのでしょうか。
周知のように、コーヒーにはカフェインという物質が含まれています。このカフェインは、紅茶やコーラにも含まれているし、大衆薬にもかなりのカフェインが含まれています。カゼ薬には35~75ミリグラム、鎮痛剤には100ミリグラムほど、そして眠気防止薬にはもっとも多く、150~200ミリグラムとされています。
コーヒーは2~3杯なら
気分爽快、集中力もUP
通常、成人は1日に約400ミリグラムのカフェインを摂取しているといわれています。それは脳にどんな効果をもたらすのでしょうか。ここでは、その半分(200ミリグラム)を摂取すると仮定して述べてみます。
普通、2~3杯のコーヒーを飲むと、200ミリグラムのカフェインを摂ったことになります。摂取されたカフェインは体内に吸収され、大脳皮質を刺激し、眠気や疲労感を感じにくくさせます。すると気分は爽快となり、集中力が高まります。つまり、コーヒーのカフェインは、実際に脳を活性化させる効果があるのです。まさに仕事の能率も上がるというものですね。
ただし、カフェインには中毒性があります。身体がカフェインに慣れてしまうと、次第に同じ量を摂取しても効き目が薄れてくるのです。そのため、最初は1杯のコーヒーだったのが2杯、3杯と増えたりします。
それに、あまりにカフェインの摂取量が増加すると、脳内にも悪い影響を与えはじめます。カフェインは大脳皮質を刺激し、脳内を活性化させてくれるますが、量が多すぎると刺激が強くなり、爽快な気分というより興奮状態に陥ります。それとともに精神的な不安感がつのり、一方でいら立ちを覚えるようになるのです。ここまでくると、カフェイン中毒への第一歩です。
一時的な「だまし」
効果にすぎない
カフェインには致命的なほどの毒性はありません。その意味では安心な物質なのですが、過度の依存は避けるようにしましょう。
大事なことは、カフェインが一時的な疲れを忘れさせているだけで、脳はまだ疲れたままだということです。過度なカフェインを摂取し続けていれば、いずれ無理がきかなくなり、燃え尽きて脳が働かなくなる恐れがあります。
また、「スタミナドリンク」でパワーが出るような気になるのも、実は一時的な「だまし」効果によるもの。本当に薬効がある、などとはくれぐれも思わないでください。