「作ったそばから売れていく。しかも利幅が十分確保できる」――。
企業業績に不況の足音が忍び寄るなか、今も“イケイケ”のビジネスがある。世界的に環境問題への意識が高まるなか、需要が急拡大している太陽電池ビジネスだ。京セラの楽観シナリオでは、2016年には、世界の市場規模が2006年の約15倍、22ギガワットに拡大する見通しだ。
かつて世界1位の座にあったシャープを陥落させた原料不足問題も解決のメドが立ちつつある。原料各社の増産計画はめじろ押し。新規参入組も少なくない。チッソ、新日鉱ホールディングス、東邦チタニウムの3社は先月、合弁会社を設立し、2010年度から太陽光パネルの主要原料のひとつであるポリシリコンを年間400トン製造することを発表した。第2期の投資が終わる2012年度には3000トン体制を確立。1期、2期を合わせた総投資額は240億円に達する。しかも、将来は1万トン体制を狙う超強気の姿勢だ。
原料から最終製品まで勢いの止まらない太陽電池ビジネスだが、ひとつだけ困った問題がある。「お膝元の日本市場がさっぱり盛り上がらない」(業界関係者)のだ。太陽光発電協会の発表によれば、2007年度の日本の国内向け出荷量は2年連続の減少を記録するなど、冴えない状況が続く。今後も欧米を中心に市場拡大が続けば、ドイツのQセルズなど欧米勢に引き離されかねない。
そんななか業界関係者が期待するのが、今年7月7日に開催される北海道洞爺湖サミットだ。「地球環境サミット」と銘打っているだけに、早くも「税制や電力買い取りなど、太陽光発電になんらかの優遇策が出るのでは」(業界関係者)とざわつき始めた。欧州では、太陽光で発電された電力を市場価格の約3~5倍で買い上げる制度が確立し、一気に市場が拡大したとあって、業界の期待はふくらむばかりである。
(『週刊ダイヤモンド』編集部 佐藤寛久)