先月17日、人材派遣業界3位のテンプスタッフが、東海地方を拠点とするピープルスタッフと経営統合すると発表した。10月に共同持ち株会社「テンプホールディングス」を設立し、両社はそれぞれ事業会社として傘下に入る計画だという。
派遣業界はまさに成長が続いており、覇権がまだ決まっていない業界であるといえる。人材派遣の分野は、大きく分けると、
1)一般事務
2)技術者
3)軽作業
の3種類に分かれるが、とくにいま合従連衡が進んでいるのは、1)一般事務派遣である。その口火を切ったのは、リクルート。昨年12月、業界5位であるリクルートが、1位のスタッフサービスを1700億円もの巨額で買収。まさに「小が大を飲む」買収を行ない、業界に衝撃が走った。両社とも未上場会社であるが、リクルートは豊富なキャッシュフローによる巨額の買収資金によって、派遣業界でダントツ首位の地位を手に入れたわけである。
またリクルートは、業界においても人材の供給会社としても非常に有名である。テンプスタッフ、インテリジェンス、エンジャパンなど、人材ビジネス業界にはリクルート出身者が非常に多い。実際にテンプスタッフでは、社長はオーナーである篠原欣子氏であるが、No.2はリクルート出身者である。さらに、リクルートによるスタッフサービスの買収によって、業界としてより“リクルート色”が強まったといえるかもしれない。
テンプとピープル
好相性の理由
今回のテンプスタッフとピープルスタッフの統合は、統合相手としては非常にいい組み合わせである。業界3位のテンプと中堅のピープルが統合することにより業界2位に押し上げるという構図であり、両社とも上場会社であることから共同持ち株会社で統合できるため、資金的な負担も少ない。未上場同士の買収により巨額の買収資金を要したリクルートと比べ、上場会社であるというメリットを活かした統合となっているのだ。
実は直前決算期での1株あたりの利益や純資産を比較すると、ピープルは1株当たり利益が15280円(テンプは9564円)、1株当たり純資産は94962円(テンプは65337円)で、いずれもテンプを大きく上回っている。にもかかわらずピープルの株価はテンプよりも3割以上も安かった。これは企業規模が小さいということが不安材料として如実に株価に反映していたわけだが、しかし今回のテンプとの統合によりその懸念が払拭されることになる。