【第53回】 2008年12月12日
正社員や内定者にもリストラの波!「整理解雇」と「内定取消」に共通する法的問題点
日本IBMの退職強要疑惑に、日本綜合地所のずさんな内定取消問題
金融危機以降、大手企業にいま、リストラの嵐が吹き荒れている。まずそのターゲットになったのは期間従業員や派遣社員などの非正規社員たち。連日ニュースで「派遣切り」という言葉が登場し、契約解除無効を求める労働紛争も起きている。しかしついに、リストラの余波が正社員にもおよび始めた。ソニーは09年度末までに正社員8000人の削減計画を発表。日興コーディアル証券は1000人超の希望退職を募ったという。
日本IBMが正社員に退職強要?
会社と労働組合が対立!
このような正社員を対象としたリストラの中でも、いま問題になっているのが日本IBMだ。同社は、本社米IBMの意向による世界的な事業見直しの中で、日本法人でも人員削減が避けられなくなったため、今年12月末までに正社員1000人のリストラを行なうことを決定したという。
しかし、それを受けてトラブルも発生している。今月3日、同社社員の一部で構成される労働組合JMIU日本アイビーエム支部が記者会見を行ない、「社員が退職を強要されている」と訴えたのだ。同組合によると、今回リストラの対象になったのは「社内評価の下位15%」の社員だという。12月末を期限に、最大15~24ヵ月の退職金加算を行なうという退職プログラムが組まれているようだ。
さらに組合側の主張では、退職を数回断った社員の中には「48時間以内に退職に同意すれば支援金を加算する。同意しなければ解雇する」と迫られ、実際に退職に追い込まれた者もいるという。「これは労働法違反の行為である」として組合は徹底抗議している(ただし会社側はその事実を否定)。
成績下位者に絞ったリストラ
事実上「指名解雇」の可能性
日本IBMの正社員は約16000人。そのうち1000人がリストラの対象となる。同社の全従業員から見れば6%程度であるし、ソニーの8000人と比べれば、必ずしも多い人数とはいえない。しかし今回注目すべきなのは、リストラの対象者を「社内評価の下位15%」と限定していることである。
しかも多くの企業がリストラ策として一般的に行なっている「希望退職者の募集」ではない。もちろん、一般的な希望退職者の募集であっても、対象者を限定することはある。ただその多くは「50歳以上」などのような年齢制限や特定の職種を対象とするものがほとんど。その条件に該当すれば、優秀である人、優秀でない人にかかわらず、原則誰でも応募できるようになっている。
しかし、今回の日本IBMにおいては、誰でも応募できる制度ではない。成績の低い人たちだけに限定し、“人を選んで”早期退職を促していることになる。その対象者(成績下位15%)は正社員の約16000人の割合でいえば約2400人。管理職等を除くといわば2人に1人の割合で退職を勧奨されているということになる。これはある意味、“指名解雇”“肩たたき”的な要素が多分にあるといえるだろう。
違法性の判断基準となる
「整理解雇の4要件」とは?
しかし日本においては、労働法によって正社員の保護が手厚くなっており、会社はそう簡単に正社員をクビにすることはできない。会社都合による人員削減(整理解雇)を行なうためには、「整理解雇の4要件」(下記)といわれるものを満たしていなくてはならない。裁判で争われることになったとき、それが違法性を判断する重要な基準となるのだ。
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- 永沢徹
(弁護士)
1959年栃木県生まれ。東京大学法学部在学中に司法試験合格。卒業後の84年、弁護士登録。95年、永沢法律事務所(現永沢総合法律事務所)を設立。M&Aのエキスパートとして数多くの案件に関わる。著書は「大買収時代」(光文社)など多数。永沢総合法律事務所ホームページ
この連載について
100年に一度の経済危機に見舞われ、企業を取り巻く環境は大幅に悪化。“企業乱世”ともいえる激動時代の経済ニュースを、弁護士・永沢徹が法的な視点を加えながらわかりやすく解説する。
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