個人的には、「ついに来たか」という印象が強い。僕は、10年も前から「技術の果て」という理論を唱えてきた。ITが進化するのはよいが、人々のニーズを上回る進化は無意味だと言ってきた。高性能な製品を作り続けるのは、実は難しいことではない。よりハイパフォーマンスにして売れるなら、それほど楽なことはないだろう。だが、時速300キロで走れる自動車を誰もが求めないのと同じく、超高性能なパソコンを求めるユーザーは実はさほど多くないのだ。人々のニーズを超える進化の境目が、今なのかも知れない。
パソコンの進化が
停滞するのか
スタンドアローンでパソコンを使っている限り、リッチなソフトを高性能なハードで動作させてライバルに差を付けるという図式は問題なく成り立つ。だが、コミュニケーションの手段でもあるインターネットでは、汎用性が命だ。多くの人とやり取りできるシンプルなメールが意味を持ち、大勢が見てくれるWebページでなければ、メリットがない。
インターネットの進化がそろそろ頭打ちに近づいているのだろう。回線の速度ももう十分だ。
あと、1年半ほど経つと、新しいWindowsが登場する。だが、1世代前のOSである「Windows XP」の人気がいまだに高いことを見ても、パソコンの進化が停滞していることは明白だ。OSを乗り換えたとしても、結果としてできることがあまり変わらなくなっているのだ。
Atomを搭載した5万円パソコンでWindows Vistaを利用してみると、確かに快適とは言えない。だが、これで十分とも思えてしまう。車にたとえるなら、軽自動車やリッターカーである。一番台数が売れるジャンルなのだ。
OSやCPU、パソコンのハード、ソフトメーカーが、生き残りを賭けて勝負するときが来た。今できること以上の提案がないのなら、20年ほど続いたパソコンの進化は終演だ。いよいよコモディティ商品として、世界的に普及するであろう。逆に言うなら、もはや簡単に利益の出る商品ではなくなるのだ。
ユーザーにとっては、2つの側面が考えられる。もはや、パソコンに高いお金を払う必要がなくなる。これは良いことだ。だが、パソコンで仕事が楽になったり、体験したことのないようなAVが楽しめる可能性は低くなる。この点は、メリットとは言えない。IT市場が「コモディティ化」に向けてドラスティックに変化するか否か、この数ヵ月でひとつの答えが出てきそうだ。



