【ワシントン】マイク・ペンス米副大統領とカマラ・ハリス上院議員(民主党、カリフォルニア州)は7日、ソルトレイクシティのユタ大学で開催される副大統領候補によるテレビ討論会に臨む。

 通常なら大統領選の行方に大きな影響を及ぼすことはないイベントだが、ドナルド・トランプ大統領が新型コロナウイルスに感染し選挙活動の中断を余儀なくされていることで、有権者の注目も高まりそうだ。トランプ氏の感染により、ペンス氏が果たす役割の重要性が高まっているほか、両陣営ともに大詰めで選挙戦略の見直しを迫られており、討論会での両候補のパフォーマンスは、今まで以上に大きな意味を持つとみられている。

 これに先立ち行われた大統領候補による初回の討論会は、迷走ぶりが目立った。トランプ氏が繰り返しバイデン氏の発言を遮ったほか、両候補とも非難の応酬に終始した。トランプ氏に近い関係筋は陰で、トランプ氏のパフォーマンスは過度に攻撃的で、有権者の一部を遠ざけたのではないかと懸念していると明かす。両候補による討論会は月内にあと2度予定されているが、トランプ氏の病状がどのような影響を及ぼすのか不明だ。

 今週のテレビ討論会は、ペンス、ハリス両氏にとっても政治家としての試金石となる。ペンス氏は2016年の米大統領選で出馬を検討。一方のハリス氏は、今回の大統領選で民主党の指名候補争いに出馬したが、昨年12月に撤退を表明していた。双方ともに将来、大統領選に出馬する可能性は十分ある。とりわけハリス氏は、民主党内で若き世代の新リーダーと目される人物だ。76歳のバイデン氏はこれまで、自身の政権は党内で次世代への架け橋となるとの考えを示している。

 今回の討論会では、バイデン陣営の要請を受けて、両候補は7フィートではなく、12フィート(約4メートル)の距離を置いてステージに立つ。

 ペンス氏は今週、コロナ検査で陰性が確認された。先週にはコロナ感染が判明しているトランプ氏と接触しているにもかかわらず、側近によると、ペンス氏が自己隔離に入る計画はない。ペンス氏の医師は、トランプ氏とのやり取りは「濃厚接触」には当たらないと述べている。

 事情に詳しい関係筋によると、ペンス氏は副大統領としての公務をこなしつつ、選挙活動のため頻繁な移動を余儀なくされながらも、水面下で数週間にわたり討論会への準備を進めてきた。16年の副大統領候補のテレビ討論会でもペンス氏の予行練習を手伝ったスコット・ウォーカー元ウィスコンシン州知事らが今回も準備に関わっているという。

 ペンス氏は選挙集会で、ハリス氏を「過激な左派」と断じ、バイデン氏については「過激左派の『トロイの木馬』」とのレッテルを貼っている。ペンス氏は討論会でもこうした主張を展開する見通しだ。

 民主党がどの程度、左派色を強めるべきかとの論争はここにきて下火となっているが、バイデン氏が当選すれば、再燃する公算が大きい。ハリス氏は指名候補を争っていた際、医療保険についてメディケア(高齢者向け医療保険)拡充を訴えたが、左派が望むほどは踏み込んだ措置は提案せず、党内の溝を埋める存在にはなりきれなかった。

 ペンス氏は週末、側近らと討論会の戦略について協議した。内情に詳しい筋が明らかにした。だが、トランプ氏の入院により、予定していたほどは時間が割けなかったという。ペンス氏は5日、ユタ州に向かいさらなる準備を行う見通し。

 一方、ハリス氏は2日にネバダ州で選挙活動を行った後、ソルトレイクシティに向かい、週末はほぼ討論会の準備に専念した。

 ハリス氏はこれまで、バイデン氏の政策スタンスや実績に関する理解を深めてきた。同氏は準備の多くを首都ワシントンにある出身校のハワード大学で行っており、テレビインタビューや仮想イベントもここから実施している。

 ハリス氏は討論会で、コロナのパンデミック(世界的な大流行)や医療保険に重点を置き、政権のコロナ対応――およびコロナ作業部会におけるペンス氏の指導力――をバイデン氏の政策プランと対比させる考えだ。ハリス氏の準備の事情に詳しい筋が明らかにした。

 側近によると、トランプ氏の入院により、ハリス氏は言葉を慎重に選ぶ必要性が生じており、メッセージを微調整している。背景には、バイデン氏がミシガン州で行った演説で政策絡みの批判を行ったことについて、トランプ氏の治療中にバイデン氏がトランプ氏を批判したのは不適切だとの声がトランプ陣営から上がったことがある。

 民主党の正副大統領候補の討論会準備を数多く手助けしてきたロバート・バーネット氏は、ハリス氏が具体的な政策を訴えることに注力することで、コロナ対応におけるトランプ政権との対比を鮮明にすることができると指摘する。同氏は「今回の討論会は、バイデン―ハリスが掲げる政策プランは何なのか、米国民に説明する機会になる」とし、「あらゆる機会を使って、何をするのかカメラに向かって有権者に直接訴えかけるべき」と述べる。

 民主党関係者からは、トランプ氏は女性有権者の支持を失っていることから、ペンス氏は女性のハリス氏の人物像を表現する上で慎重を期す必要があるとの指摘が出ている。トランプ氏はこれまで、ハリス氏を「意地が悪い」「気が狂っている」「激怒している」などと呼んでいる。

 関係筋によると、ハリス氏の討論会チームは、過去にバラク・オバマ前大統領やヒラリー・クリントン大統領候補の討論会準備を手伝ってきたカレン・ダン氏が率いている。ブルームバーグ通信は、ハリス氏とともに指名候補を争っていたピート・ブティジェッジ元インディアナ州サウスベンド市長が、予行練習でペンス氏の役割を演じたと伝えている。ブティジェッジ氏は先週、Foxニュースとのインタビューで、ペンス氏の役を引き受けたか明言しなかった。

 ハリス氏は討論会で、トランプ氏とペンス氏のスタイルや言動には違いがあるものの、両氏の政策や意志決定は切っても切り離せないと主張する考えだ。側近らが明らかにした。

 ハリス氏は上院司法委員会のメンバーの中でとりわけ厳しく相手を追及してきたことで知られる。だが、ペンス氏も手ごわい論客だとして、ハリス氏や同氏のチームは、討論会を前に期待値を下げようとしている。ハリス氏はヒラリー・クリントン氏とのポッドキャストでのインタビューで、ペンス氏との討論会は民主党の指名候補争いに向けた討論会とは極めて異なるものになるとの見方を示している。

 同氏は予備選の討論会では「さまざさま問題について、他の候補者と比較した際の自分の立場を訴えることに重点を置いてきた」と説明。「今回はジョー(バイデン氏)やマイク・ペンス、そしてトランプの実績について、完璧とは言わないまでも、ある程度の知識が要求される。そしてもちろん、それから私の実績も主張する」と語っている。

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