「GIGAスクール構想」で学校教育の現場はどうなるのか急速に進む義務教育段階での“1人1台”。子どものICTリテラシー向上には 端末を文具のように使う学習機会を増やすことが不可欠だ 写真提供:豊福晋平氏

「日本の学校教育には、長年にわたり解決が先送りされてきたため、深刻化している課題が山積しています」と豊福晋平さん。せっかく導入しても使いこなされず、書類の上に載せられて“文鎮化”するICT(情報通信技術)機器など、学校教育の現場の実態を数多く見てきたからこそ指摘できる課題の数々を、豊福さんが“腑分け”していきます。(ダイヤモンド社教育情報)

新型コロナが後押しした「GIGAスクール構想」

 文部科学省の推進する「GIGAスクール構想」によって、現在、小中学校へのWi-Fi敷設と生徒1人に1台のパソコンやタブレット端末の支給が急ピッチで進められています。元々2019年から23年の間に全国の学校にICTの利用環境を整備しようという計画でしたが、20年春の新型コロナウイルス感染症による臨時休校措置でオンライン授業の有用性が注目されたこともあり、それまで5年がかりで行う予定だったものが、ほぼ1年の前倒しで実現が図られています。新型コロナの後押しで、GIGAスクール構想が急速に進展しようとしているのです。

 小学校でプログラミングが必修科目となった20年4月の新学習指導要領でさえ、想定されている端末の割り当て数は「3クラスに1クラス分(3人に1台)程度」でした。プログラミングでは個人の試行錯誤に十分時間を確保するのが望ましいのですが、今の状況では授業時間中の課題を家に課題を持ち帰ることさえできません。ほかの科目でも、共用端末を使う限りは、「パソコンやタブレットを使った課題は授業時間内でしか扱えない」というICT活用の形を変えることは困難でしょう。

 この「GIGAスクール構想」のパンフレットには、「多様な子供たちを誰一人取り残すことなく、子供たち一人一人に公正に個別最適化され、資質・能力を一層確実に育成できる教育ICT環境の実現へ」と記されています。

 そこで示されている認識は、「学校のICT環境整備状況は脆弱かつ危機的な状況」にあり、「学校の授業におけるデジタル機器の使用時間はOECD加盟国で最下位」で、「世界の後塵を拝している状況」というものです。

 グローバル化の進展でますます予測困難な時代に突入する過程で、今後はICTによってさまざまな知識や情報を共有し得る社会が構築されていきます。詳しくは後述しますが、こうした社会の大きな変化に対応するため、今の子どもたちは個人の能力や関心に即した学びを通じ、生きるために必要な実践的能力を身に付けなくてはなりません。

 したがって、学校もこれまでのように、先生が一律の知識を多数の生徒や学生に一斉に教える授業スタイルからの脱却を迫られることになります。GIGAスクール構想によって、小中高校の生徒が自分の理解度と学習履歴に応じて自在に学び直しや先取り学習ができたり、あるいは、学校内外の人とアイデアを交換しながら新たな付加価値を発信していく、そんな学習の形が広がることが期待されています。